実生社(みしょうしゃ)の越道(こしみち)京子と申します。2021年に会社を立ち上げ、ほぼ一人で実務をおこないながら2022年に5点刊行することができました。 ■原体験 私が出版という仕事にかじりついているその原点は、この『ある社会主義者の一生』という本にあります。 これは、私の祖父である前田陸雄の評伝です。祖母が、三一書房さんにお金を出し、中国新聞社の記者であった日下次郎さんの丹念な取材、執筆により1974年に刊行されました。 挿絵は、「原爆の図」を描いた丸木位里さんによるものです。広島のまちなかで生まれ育った祖母は、弟を広島の原爆で即死状況で亡くして以降、反核運動をしていました。 祖母はその壮絶な経験や家族について、心の傷から、生前は私に一切語ることがなかったのです。この本のおかげで、私の祖父がどのように生きたのかを知ることができました。自分のルーツをたどることで、歴史とつながることがで