先行する欧米や中国に対して、電気自動車(EV)シフト転換で後れを取る日本の自動車産業。世界に誇る“基幹産業”は、衰退を避けられないのか、それとも2024年に光明は見えてくるのか―─長年にわたって自動車業界を取材してきたジャーナリストの井上久男氏がレポートする。【前後編の前編。後編を読む】 * * * 東南アジアは日本企業が数多く進出し、日本経済の生命線の一つだ。日本の自動車メーカーも多くの生産拠点を持ち、日本車のシェアが9割近い“金城湯池”である。中心国の一つ、タイにおける2022年のメーカー別販売順位は1位トヨタ自動車(シェア33.9%)、2位いすゞ自動車(同25%)、3位ホンダ(同9.8%)で、この3社だけで7割近いシェアを持つ。 そのタイで今、異変が起きている。2023年10月の新車販売でEVが前年同月比で6.3倍の7715台となり、新車に占める比率が一気に15%を超えたのだ。1~1