出版流通の現場から。廃棄を目の当たりにする「出版倉庫」を営むからこそ分かる書籍廃棄の痛み | SeLn こんにちは、〈SeLn(セルン)〉広報部です。 〈SeLn〉は「出版流通を再発明する」を経営理念に掲げ、出版流通のデジタル化・オンデマンド化を進めるスタートアップ企業です。まだまだ小さな企業ですが、出版流通への大きな愛と強い気持ちをもって事業をすすめています。 出版倉庫ニューブックの2代目社長として育ったセルンCEOの豊川から見た、出版流通の栄枯盛衰、そして、これから……。 このnoteでは、どのような思いでこの事業を始めたのか、その背景にある出版業界の変遷についてお話ししますので、ぜひ最後までお付き合いください。 本屋や出版社だけではない!昔の「出版流通」は大忙し!CEO・豊川の父が出版物流倉庫をはじめた1970年代頃は、出版業界がまだまだ右肩上がりの頃でした。 当時は、本に挟まれてい
「一般文芸」という不思議な言葉がある。出版業界用語の一種で、普通の辞書には載っていない言葉である。ラノベ業界においては「ラノベ以外の小説」という意味で使われることが多いが、別にラノベ発祥というわけでもない。よく本を読む人でも「そんな言葉は知らなかった」ということも多いだろう。明確に定義されているわけではないし、誰が言いはじめて、いつから使われているのかもわからない。 しかし、いまや我々はインターネットだけで明治以降のさまざまな書籍を全文検索して用例を調べることができる。そう「国立国会図書館デジタルコレクション」である。ありがたやありがたや。というわけで「一般文芸」について検索してみよう。 検索できるかぎりにおいて、おそらく最も古いのが1892年(明治25年)『哲学雑誌』内の一文である。 文學史といふ名稱は文學の歴史即ち「リテラツールグシヒテ」といふ意味なるべしと思ひしに此度の三書は文學史と
去年1年間の出版物の推定販売額は、電子コミックの売り上げが好調だったものの、紙の書籍の落ち込みが大きく、紙と電子を合わせた全体では、2年連続で前の年を下回りました。 出版業界の調査や研究を行う出版科学研究所のまとめによりますと、去年1年間の出版物の推定販売額は、紙と電子の合計で前の年より2.1%少ない1兆5963億円と、2年連続で前の年を下回りました。 このうち「電子出版」の売り上げは前の年を6.7%上回る5351億円となり、中でも「電子コミック」は、1話ごとに購入できるサービスや、出版社と協力し、ほかより先行して配信する作品を強化するなど各ストアの戦略が活発で、電子出版の売り上げ全体の9割を占めています。 一方「紙」の出版物は書籍・雑誌ともに売り上げが落ち込み、全体で前の年を6%下回る1兆612億円となりました。 書籍では村上春樹さんの6年ぶりの長編小説や、42年ぶりに続編が出た黒柳徹子
まず2023年6月19日の『週刊文春・電子版』をご覧になったであろうか。なんとライトノベル市場が半減したというのだ。私は「note」にて既に2019年にて警告を発したことがあるが「じゃーなんで次々ミリオンヒット作が出てるんだよ」という反論に負けてしまった。だがやっぱり体感的なことまで当たってしまった。 そりゃそうじゃん、中年読者を優先させて中高生のニーズを除外したらそりゃそうなるよね。 で、私は「真のラノベ市場の第一ピーク」って1997年だと思ってるんですよ。なぜかって? 膨大な若年層(厳密には23歳前後の新社会人層)が1996年末頃にラノベを卒業するかどうかの世代に当たるからです。そうです。年約200万人も出生数がいる団塊ジュニア世代の存在です。今の18歳人口年約110万人だぞ。それを考えたら真のラノベ市場は1997年頃がピークで読者のすそ野も大きく、逆に2013~2016年当時は既に一
出版取次最大手の日販(日本出版販売)が発行した『出版物販売額の実態2023』によると、22年度の出版物のインターネット経由での販売額は書店経由での販売額を超えた。紙の書籍・雑誌に限ると、書店ルートの推定販売金額は8157億円だったのに対しネット経由は2872億円と依然として書店経由が圧倒的に多いが、電子出版物が6670億円と推定される。購入ルート別ではネット経由(紙の本+電子出版物)がリアル書店を超えたことになる。書店ルートは縮小し、ネットルートが伸びる傾向は今後も変わらないだろう。 リアル書店からネット書店や電子出版物へと消費者が流れる原因のひとつに、リアル書店における在庫情報の不備が挙げられる。ネットで在庫情報を公開している書店も一部にはあるが、まだまだ少数で、各店を横断的に検索するのも難しい。1冊の本を探して何軒もの書店をハシゴした経験のある人は多いだろう。だからつい「急ぎの本はネッ
いつもhontoサービスをご利用いただきありがとうございます。 ハイブリッド型総合書店サービス「honto」ではネット書店(本の通販ストア、電子書籍ストア)とリアル書店を連携したサービスを展開しておりますが、2024年3月31日をもって「本の通販ストア」のサービスを終了することと致しました。 2012年5月のサービス開始以来、多くのお客様にご愛顧賜りましたこと、深く御礼申し上げます。 サービス終了後の2024年4月1日以降「honto」は電子書籍ストアのサービスは継続し、本の通販に関して「e-hon」との連携を開始致します。 紙の本をご購入される場合は、hontoサイトからe-honサイトへ誘導し、お客様のご購入をサポートして参ります。 また、丸善ジュンク堂書店オンラインサイトの立ち上げも計画しております。 リリース時期が決まり次第、改めてアナウンスさせて頂きます。 〈 honto 本の通
取次最大手の日本出版販売(日販)がコンビニ配送から撤退するというニュースが、雑誌出版社に衝撃を与えている。日販はローソン、ファミリーマート、セイコーマートへ雑誌等を配送しているが、業界紙『文化通信』によると、2025年2月までに終了するという。もっとも、代わって取次第2位のトーハンが引き継ぐとみられ、多少の空白期間ができる可能性はあるものの、一般読者への影響は少ないだろう。 ただ、日販の撤退は雑誌販売がすでに抜き差しならない状況にあることを示している。日販がコンビニから撤退するのは利益が出ないからだ。00年代初めには7%ほどあったコンビニの総売上高に占める出版物の売り上げが、最近は1%程度にまで落ち込んでいる。売り上げが減っても配送する手間は変わらない。加えて、人手不足と燃料代の高騰が続いている。しかし、日販の後を引き継ぐとみられるトーハンにしても、その事情は同じだ。 コンビニにとって、雑
「紀伊國屋書店」や「蔦屋書店」などライバルどうしの書店が手を結び、仕入れや流通を共同で行う新会社を設立することを正式に発表しました。書店の減少に歯止めが掛からない中、経営の効率化で生まれる余力を書店の魅力づくりに振り向けることが狙いです。 発表によりますと、紀伊國屋書店のほか、「蔦屋書店」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ、それに出版取次大手でグループで書店を運営する日本出版販売の3社は、仕入れや流通を共同で行う新会社の設立に向けて協議を始めることで合意しました。 3社が持つ販売データを共有化し、AI=人工知能を使った需要の予測に基づく発注システムを共同運営することで、本の返品率を減らし、流通の効率化を進める方針です。 さらに、顧客向けのアプリの開発など書店横断型の新たなサービスも検討します。 新会社はことし秋の設立を目指すとしています。 3社が展開する書店は、全国であわせて
出版社が苦境に立たされている。元経済誌プレジデント編集長で『週刊誌がなくなる日』の著者である小倉健一氏が、各社の内情を語る――。 「出版流通は、もはや既存構造では事業が成立しない」「出版流通はもはや既存構造では事業が成立しない。市場の縮小に、トラック運転手の労働時間規制を強化する『2024年問題』が重なり、本を運ぶ費用を賄えない」(日経新聞5月24日)――こう話すのは、出版取次大手トーハンの近藤敏貴社長だ。トーハンは、2023年3月期の出版流通事業が4期連続で経常赤字になることが見込まれていて、出版各社に書籍や雑誌の運搬費の値上げを相談するという。 物流業界で、今、大きな問題となっているのが「2024年問題」だ。ブラック化しているトラックドライバーの労働環境の改善のため、来年(2024年)4月から、時間外労働の上限が年間960時間に規制され、月60時間以上の残業をした場合、割増賃金率がアッ
昨年11月16日の刊行から炎上状態になっていた岩崎夏海氏・稲田豊史氏の共著『ゲームの歴史』(講談社)の販売中止、早期返品が先月4月7日に発表されている。全編を通じて多岐に渉る事実誤認があり、当初、著者が言及していた改版時の修正も困難と判断されたようだ。 ※岩崎夏海氏は既にTwitterアカウントを削除しているどれほどの間違いが含まれているかについては、1980年代からゲーム業界に携わるプログラマー・ライターの岩崎啓眞氏が自身のブログで検証を行っている。氏によれば「デタラメ・間違いが数限りなく」あり「固有名詞と発売日以外は書いてある内容は全て疑ってかかる」べき本ということになる。(なお氏は既に本書に関する10本以上にわたる批判・検証記事を書いていて、非常に資料的価値が高いものになっている。書籍化も計画されているとのこと) 通常、書店で手にするような本は「校閲者」と呼ばれる専門家が、本文で言及
エネルギー価格の高騰や円安で身の回りの商品の値上げが相次ぐなか、新聞用紙の値上げが業界を直撃している。 用紙代を転嫁する形で値上げを発表する新聞社が相次ぐ一方で、読売新聞は「少なくとも向こう1年間」は値上げしないことを発表。値上げによる購読者離れを警戒しているとみられ、消耗戦の様相を呈している。 「用紙代など新聞製作にかかる原材料費が...」 日本製紙は2023年2月27日、4月1日納入分から新聞用紙を1連(4000ページ分)当たり300円値上げすると発表した。値上げ幅は1割強。日本製紙の発表では、値上げの背景を「足元の原燃料価格は依然として自助努力のみでは再生産することが極めて困難な水準」と説明している。各紙報道によると22年末~23年初頭にも値上げした模様だ。日本製紙は国内の新聞用紙では最もシェアが大きく、他社も追随する可能性がある。 この値上がり分を購読料に転嫁する新聞社が相次いでい
22年12月の書籍雑誌推定販売金額は972億円で、前年比5.7%減。 書籍は522億円で、同3.5%減。 雑誌は449億円で、同8.2%減。 雑誌の内訳は月刊誌が388億円で、同9.1%減、週刊誌が61億円で、同1.8%減。 返品率は書籍が29.0%、雑誌が37.8%で、月刊誌は36.4%、週刊誌は45.3%。 書店売上は書籍が8%減、雑誌は定期誌が3%減、ムックが4%減、コミックスが13%減。 ゲオのレンタルリサイクル50円コーナーで、大量に『鬼滅の刃』が売られていたが、 あの神風的ベストセラーはもはや完全に終焉したのであろう。 1.出版科学研究所による1996年から2022年にかけての出版物推定販売金額を示す。 ■出版物推定販売金額(億円) 年書籍雑誌合計 金額前年比(%)金額前年比(%)金額前年比(%) 199610,9314.415,6331.326,5642.6 199710,7
「ここ2年の黒字は、コロナ禍の巣ごもり需要や『鬼滅の刃』ブームによる奇跡的なもの。計画通りに事業を再生できるかどうかは、これからが正念場です」 債務超過に陥っていた文教堂グループホールディングスが事業再生ADRを申請したのは2019年6月。再生計画2年目の2020年8月期にさっそく黒字化したが、同社を率いる佐藤協治の表情は険しいままだった。 このままでは会社が潰れる──。 佐藤が自社の窮状を知ったのは、財務担当役員になった2017年秋だ。以前から経営がうまくいっていないことは知っていた。2013年8月期から1年を除いて赤字続きだった。それでも店舗開発で書店づくりの最前線にいた佐藤は、「親会社が大日本印刷。いざとなったら支援してくれる」と危機感が薄かった。 雲行きが怪しくなったのは、筆頭株主が日本出版販売(日販)に代わってからだ。日販は文教堂の経営にコミットするつもりはなく、それを知った銀行
トップ > キーパーソンインタビュー > 株式会社ブックウォーカー 代表取締役社長 橋場 一郎氏が語る 「電子書籍が鍵となった出版業界の再興と面白い作品が生み出される世の中にかける想い」 『エンタメ人』がお届けする、エンタメ業界のトッププロデューサー/経営者へのインタビュー連載。エンタメ業界へ転職を考えている方へ向けて、エンタメへの想いから現在の業界動向まで伺っていく。第33回は、KADOKAWAの子会社であり、電子書籍全般に関する事業を第一線で牽引するデジタル戦略カンパニーを取り上げる。(編集部) プロフィール 橋場 一郎 (ハシバ イチロウ) 株式会社ブックウォーカー 代表取締役社長 2012年1月に株式会社角川コンテンツゲート(現ブックウォーカー)に入社。電子書籍関連ビジネスの企画から開発まで担当する。2019年6月に代表取締役就任。2020年4月よりKADOKAWA兼務(デジタル事
ウェブトゥーンが現在ほど注目される前から、マンガ業界で長く経験を積んだあとでウェブトゥーンに携わっていた編集者がいる。 小学館で少年マンガ、少女マンガ、青年マンガ、マンガアプリなどを渡り歩き、『うしおととら』などを立ち上げたことで知られ、2018年5月から2021年末までcomicoの編集長を務め、現在はクラッパーズ社にてウェブトゥーン事業を準備中の武者正昭氏。 同じく小学館にて「ビッグコミックスピリッツ」編集部を経て2003年に「月刊コミックIKKI」を創刊して2014年の休刊まで編集長を務め、2016年から韓国のウェブトゥーンスタジオYLABに編集者として加わり、YLAB JAPAN代表に就任して東村アキコ『偽装不倫』などの国産ウェブトゥーンを編集、同社解散後は自身の会社「部活」で松本大洋『東京ヒゴロ』などの話題作を手がける江上英樹氏。 日本のマンガ業界とウェブトゥーンを両方経験したふ
日販が86.1%だったのに対して、トーハンが98.5%と大きな開きがあります。コロナ禍を明けたと言われるGWが出版業界にとってどうだったのかが読み解けなかったため、昨年からの動きをまとめてみました。 *2020年のGW動向からの推移を見られれば良かったのですが2020年はコロナ禍の混乱もあり発表されていません。 まとめたのがこちら GW期間(4/29~5/5)の過去2年動向これだと少しわかりづらいのでグラフにしてみました 数字を見ると違いにビビりましたが、昨年の数字を並べてみてそこからの開きを見るとなんとなく両社グラフのカタチが似ていることに気づきます。 で、無理矢理2021年を1としてそこからの落ち込み幅を見てみました。 2021年から2022年の下げ率なんとなく似た数字が出てきています。1ポイント以上の差があるのは開発品(マルチメディア)のみ。 グラフにしてみます。 非常に似た動向であ
ストレートエッジの三木です。 2022年も四半期過ぎましたね! ぽかぽか陽気の春まっただ中ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 今年のストレートエッジは、去年から仕込んできた企画やコンテンツをいよいよみなさまにお披露目できそうでして、ずっと水面下で頑張ってきた甲斐があったな……! と今更ながら実感しております。 さて、少し仰々しい記事タイトルをつけてしまったのですが、今回は『この先、小説家はどうやって生きていくか』について書きたいと思います。 まず相変わらずの出版不況ではありますが、明るい兆しとして近年は年間総売り上げが上向きになってきています。 巣篭もり需要などによる電子書籍(コミック)の伸びが支えた結果なのですが、しかし依然として、1995年のピーク時に比べて3分の2の市場規模にシュリンクしています。 一方で、新刊の刊行点数やレーベル、出版に参入した企業は、1995年に比べて圧倒的に
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