オーストラリアのSF作家グレッグ・イーガンの信者です。この状況が嬉しくてしかたがないです。 私たちは日常で多くの決断をします。それはリアルの人間でもフィクションの登場人物でも同じです。あのとき別の決断をしていたらどうなっていただろうと,夢想することはよくありますが,それは益体もないことです。現実は一つしかありません。私たちは決断をする権利とその結果を享受する義務があるだけです。 ですがもし,あらゆる決断について別の決断をした世界が同等のものとして存在したとしたら。私たちの決断に意味なんてあるんでしょうか。これは決して空論としての問いではありません。現在の物理学で主流の考え方の一つとなっている多世界解釈が正しいのであれば,私たちの生き方に関わる完全にリアルな問題です。 それを提示したのが2002年のイーガンの短編「ひとりっ子(Singleton)」です。彼はその中で一つの答え(意味なんかない