本連載では、米ビジネススクールで助教授を務める筆者が、海外の経営学の知見を紹介していきます。 さて、私は昨年『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)という本を刊行し、大きな反響をいただきました。そして複数の方々から「この本を書くにあたって、影響を受けた経営書はあるのですか」という質問を頂戴しました。 拙著を書くにあたって私が影響を受けたのは、経営書ではありません。それは東京大学の宇宙物理学者、吉井譲教授が2006年に書かれた『論争する宇宙』(集英社新書)という、宇宙物理学の歴史をわかりやすく紹介した本です。 物理学はド素人の私ですが、数年前にたまたま手に取って感銘を受けたのです。そして、経営学で似たような本が書けないだろうか、と考えるようになりました。 『論争する宇宙』で印象深かったことが、宇宙物理における「理論と実証のせめぎあい」です。 宇宙物理の世界では、たとえばアインシ