商品が多すぎて選べない半年ほど前である。鏡にうつる自分の顔のみすぼらしさに嫌気がさし、スキンケアをきちんとしなければと思い立った。私の顔は全体的にひどかった。仕事帰り、電車の窓にうつった私はいかにも生気がなく、まるで「会社の金を横領してつかまった経理部の中年男性」といった独特の陰鬱さがあった。われながら、この容姿はどうしたものかと情けなくなったのである。できればもう少し、はつらつとした顔になりたい。肌や身体の手入れをおろそかにしてきたツケがきたと思った。それまでも、風呂上がりに無印で買った安価な化粧水ぐらいはつけていたが、きちんとしたケアをしなければと考え、ドラッグストアへ向かったまではよかったものの、私は混乱した。商品の数が多すぎて、何を買えばいいのか見当がつかないのである。 スキンケア用品売り場はまさにカオスであった。化粧水だけでも何十種類もの商品が並んでいる。それだけではなく、乳液、
![コスメとギターエフェクターのビジネスモデルはほぼ同一|伊藤聡](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b37284c4c22cdd5c2c564d7323ff6e9261609c65/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F60535056%2Frectangle_large_type_2_735ce2dfb7a8db51377496942e6e5ddd.png%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)