伝えたはずのことが相手に伝わっていない。情報が無いままに、不十分な判断を余儀なくされる――。情報の伝達や意思疎通の不全、すなわちコミュニケーション・ロスが組織に及ぼす悪影響は大きい。不況の中、社員一人ひとりが生産性向上の努力を重ねても、コミュニケーション・ロスが存在すれば、組織全体の生産性は高まらない。 キヤノン電子の酒巻久社長は、こうした問題意識で、ある工場の現場が始めた「立ち会議」を全社に奨励してきた。会議室の予約無しにすぐ始められる、多頻度・短時間の立ち会議が、コミュニケーション・ロス撲滅の近道だという。 ―― 企業におけるコミュニケーションの問題点をどのようにお考えですか。 酒巻 組織がきちんと機能しない、あるいは製造ラインで不良が発生するといったトラブルはだいたい伝達ミスに起因します。 「情報の伝達」は、特に縦方向(上から下、下から上)が重要です。縦のコミュニケーション・ロスは、