映画『アドベンチャーランドへようこそ』(’09)は87年の夏を舞台にしたせつない青春映画で、そのあまずっぱさにわたしはすっかりノックアウトされてしまったのだが、わけても劇中「わかるなあ」とうなずいたのは、主人公の青年ジェイムズが意中の女性に渡す、”J’s Favorite Bummer Songs”*1 と題された選曲カセットであった。好きな曲を集めてカセットを作り、意中の女性に渡すという行為を、かつて文化系の男はおこなった。いまとなってみればいくぶん気恥ずかしい行為かも知れないが、わたしもやったよ。その選曲になんらかの想いを込めていたのです。 そんな話題をとある飲み会でしていたところ、二十代女性からは「選曲したカセットを渡す人」など本当にいるのか、とても信じられない、なんかダサい、という厳しい意見がでた。うつむく三十代以降の文化系の男性たち数人。わたしはほとんど逃げだしたい気持ちだった。
(写真は「ふりかえる」イメージキャラクターのオリーヴさんです) こんにちは、このブログを書いている伊藤聡ともうします。さて、先日からおこなっていた「2010年の映画をふりかえる」回答募集がようやくまとまり、今年いちばんおもしろかった映画ベスト10が決定しましたので、これからご紹介したいとおもいます。いまとなってみれば、「夏がなんかすごく暑かった」くらいしか記憶がない2010年ですが、映画はどれも見ごたえのあるものばかりでしたので、年末年始のDVD鑑賞にも参考になるかとおもわれます。このような質問内容でした。 名前/性別/ブログURLもしくはTwitterアカウント 2010年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください 2で選んだ映画のなかで、印象に残っている場面をひとつ教えてください 今年いちばんよかったなと思う役者さんは誰ですか ひとことコメント 今回の参加者は、トータルで1
7/25(日)立川のオリオン書房にて、ピンチョン全集の第一回配本『メイスン&ディクスン』(『M&D』)刊行を記念したトークイベントがあり、柴田元幸さんの聞き手としてわたしも参加しました。本日はそのようすについて書きたいとおもいます。わたしにとって柴田元幸さんという翻訳家は海外文学への扉を開いてくれたその人であり、また小説そのものを教えてくれた人でもあって、わたしはあたかも、篠塚のシュアな打撃に憧れる野球少年のような気持ちで柴田さんの本を読みつづけてきた。そんな方とトークイベントができるとあって、個人的には人生のなかでも屈指の大事件*1でした。 当日、立川の駅を降りてオリオン書房へ。とてつもない暑さである。こんなに暑いなか来場してくださる方がいらっしゃるわけだから、なるべくいい内容のイベントを……と考える。ピンチョンはかんたんに読めてすらすら理解できる作家というわけではない。それは誰にとって
三十歳をすぎて何年かたったあたりで、わたしは自分が、ジーンズとTシャツがあまり似合わない男になったことを認めざるをえなくなった。ジーンズを履いたわたしは、「日曜にホームセンターへ買いものにいくお父さん」といった体である。若々しさに欠けている。なんだかとてもがっかりさせられる、残念な発見だった。 わたしはスニーカーも好きだったし、冬はダウンジャケットとブーツという組み合わせがかっこいいとおもっていた。しかし今となってみれば、そうした服装のわたしは、「すごく寒い日に、ダウンジャケットを着てホームセンターへ買いものにいくお父さん」にしか見えず、わたしはついに、ストリート系のファッションぜんたいを断念しなくてはならないという結論にいたった。 おもうに、たいていの人が考える「おしゃれ」とは、ようするに「若くてさわやかに見える」ということである。特に女性はそうだ。あるていど流行を意識しつつ、自分ほんら
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