松山市の住宅街の一角に、無人の「町」がある。建造物はなく、存在するのはゴミ捨て場、街灯、カーブミラー。どうしてこんな町があるのか。 松山市中心部から南東に3キロほど。無人の町の名前は「天山町(あまやままち)」という。家がひしめき、狭い道を車が行き交う住宅街の中にある。 民家は建っておらず、最大幅5~6メートルほどの歩道があるのみ。30秒ほどあれば1周できるこの狭い区画が、天山町の全貌(ぜんぼう)だ。住宅が立ち並ぶ北側と東側は「福音寺町」、西側は「天山1丁目」、南側は「天山2丁目」となっている。 「この歩道の部分だけ天山町なんですよ」。通りかかった人に話しかけてみると、「よう分からんこと言うな」「そこは福音寺町やろ」。北側の福音寺町に住んでいる男性(61)も「全く知りませんでした」。 ここに会社を持っていたという男性に行き着いた。西側の天山1丁目に住む木山清重さん(71)。「あの土地は市に売