あれは随分と前の6月のこと。僕は地方都市の駅前ロータリーに立っていた。初夏の風が心地よく、爽快な気持ちになる。 そんな場所でバスを待っていると、冒頭のセリフが聞こえてきた。それ自体は特段に取り立てることではなく、ごくありふれた雑踏の中の一つの言葉であったが、大きく興味を持ったのは、そのセリフが女子高生の口から放たれたことだった。 彼女は制服を少しだけ崩した着こなしをしていて、それ以外は普通の今どきの女子高生だった。健康的で活発そうで、どちらかと言えばかわいい子だった。そんな彼女の口から「稲の成長がはやい」というアンバランスなセリフが出てきたのだ。稲と女子高生が繋がらず、少なからず困惑した。
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