巻誠一郎は、走る。 交代で入ってくるだけで周りの温度がグッと、ババッと引き上がる。 184cmの大きな体躯を揺らしながら、ボールホルダーに対して迫力あるプレッシングを前後左右で発動する。追い込んでボールを奪ったら、前へ。途切れることのない荒い息遣いは、執念の証左でもある。 4月8日、町田市立陸上競技場、アウェーの町田ゼルビア戦。 故郷に戻り、ロアッソ熊本で5年目のシーズンを迎える37歳の巻は残り7分のタイミングでピッチに入ってきた。タッチラインで「ナイスゴール!」と得点を挙げた皆川佑介を拍手で迎え、勢いよく駆け出していく。 大宮アルディージャを指揮した渋谷洋樹監督を迎えた熊本は、ここまでプレーオフ圏内に食い込む健闘を見せている。 サイドの強みと皆川、安柄俊、巻と前線のエアバトルの強み。ストロングポイントを活かすスタイルそのままに、この日もゴールを奪った。 一方、今季負けなしの町田はコンパク