2023年の1月のこと。1通の封書が、瀬戸内海に面する役所から届いた。 私は、東京で生まれ育った人間だ。ふだんの生活とはみじんも関係ない地方からの郵送物。とっさに「詐欺的なやつか?」と警戒する。 しかし、この場所は親父の出身地だったなと思い至った。とはいえ、その親父は数十年前に鬼籍の身だ。不穏な気持ちのまま、とりあえず封を開けてみる。 ご親族の死亡について(通知) 手紙の見出しには、こう記載があった。続いて本文。 令和4年※月※日(推定)に、あなたの兄(異母兄弟)にあたる※※※※様が亡くなられたことが確認されましたので、お知らせします。 氏名の記憶は全然ないものの、そういえば親父の葬式のときに腹違いの人が来てたなぁと思い出す。母親からそういう存在がいることは聞かされていた。 葬式の場で「ほら、あいつだよ!」と母親から憎々しげな口調で教えてもらったことも、今になってまざまざと思い出す。 母親