文学批評理論概論 1950-1980 3.作者はテクストの中に: ナラトロジーの仮想戦略 NC と構造主義によって徹底的に突き詰められた作品分析志向を洗練させたのが、70年代以降に急速に発達したナラトロジー Narratology である。手短に言えば、ナラトロジーとは、諸々の物語を分析し分類するための「包括的枠組み」を探求する学である。要するに、個別的な批評ではなく、物語一般についての学、それがナラトロジーである。ナラトロジーの代表 S. チャットマンが述べているように、彼等の理論的な土壌は、本発表がこれまで扱ってきた二つの理論、即ち NC と構造主義である。それゆえ、彼らもまた、自分たちの両親に倣い、基本的には「意図に関する誤謬」「情動に関する誤謬」を回避し、テクスト自体の分析についての理論を目指している。 彼等の大きな特徴は、必ずしも物語を言語的テクストには限定していない点である。