◆この記事は「法律時報」94巻10号(2022年9月号)に掲載されているものです。◆ 大阪地裁令和4年6月20日判決 1 はじめに 理由なき差別と言い訳奴隷制が当たり前の社会では、〈人を奴隷にして良い理由〉について考える人はそうそういない。女性に参政権がないのが当然だった時代、それを不当な差別と考える人はもちろん、そこに理由が必要だと考える人すらごく少数だっただろう。これを「理由なき差別」と呼ぼう。 これに対し、差別反対の声が上がり始めた社会では、差別を続ける人たちが、〈○○人は劣等だから〉、〈女性は頭が悪いから〉といった無理な言い訳を始める。それは憎悪感情や誤った事実認識に基づくもので、被差別者を攻撃する内容だ。一見すると、攻撃的な言い訳を伴う差別の方が理由なき差別よりも酷く見える。しかし、筋の通らない言い訳であろうと、その誤りや問題を指摘し、改善のきっかけを作れる点でまだましだ。理由な