公正取引委員会が2021年10月に、システム開発などを担う下請けITベンダー2万1000社に対する取引実態調査に乗り出した。良い機会なので、ユーザー企業がシステム開発を外注する際の問題点を、ESG(環境・社会・企業統治)の観点で考えてみたい。ただし「環境」ではない。「S」つまり「社会」の観点からである。 日本ではユーザー企業が基幹系など大規模システムを開発する際、システムインテグレーター(SIer)に発注する場合が多い。基本的に請負契約であるため、開発の実務はSIerに任せ、発注側はベンダーマネジメントと呼ばれる進捗などの管理業務に徹することになる。いわゆる「丸投げ」である。 丸投げされたSIerは、パートナー企業と呼ぶ下請けITベンダーに、システム開発の一部、場合によっては全てを再委託する。下請けITベンダーはさらに複数のITベンダーに委託し、委託されたベンダーも…といった具合に再委託を