世界 2006年2月号 (岩波書店) 開花する「Jナショナリズム」 嫌韓流というテクストが写し出すもの 中西新太郎(横浜市立大学国際文化学部教授) 嫌韓流ヒットから浮かび上がる問い インターネット世界から生まれたといえるコミック、山野車輪『嫌韓流』(晋遊舎)がベストセラーになったことに、「なぜ?」と疑問を抱く向きは多かろう。ただし、「なぜ」の内容は一義的ではなく漠然としている。なぜ青年層があからさまな排外主義的な言説を支持するのか。なぜナショナルな言動がこれほど急に浸透するようになったのか。アクティブな政治的主張をなぜ若年層がストレートに行うようになったのか、『電車男』の流行と『嫌韓流』のそれとは関係があるのか等々、疑問の焦点は必ずしも定かではない。 そしておそらく、これらの漠とした疑問の底には、今日の青年層にたいする、その心情や振る舞いの「わからなさ」に対する不安と不満が潜んでいる。「わ