アンソニー・ウェストンせんせいの『論証のルールブック』の付論では,定義の取り扱いを解説している.ちょっとだけ抜粋してみよう: D3: 定義は論証の代わりにはならない 定義は考えをまとめたり,似てるものどうしをひとくくりにしたり,重要な類似点や相違点を抜き出すのに役立つ.言葉をはっきり定義してみたらさっきまで議論で対立していた2人が実はその論点をめぐってなんにも異論がなかったのに気づくことだって,たまにある. でも,定義そのもので難しい議論の決着がつくことなんてそうそうありはしない.たとえば,特定の物質にどういう立場をとればいいか決めたいという理由もあって,「ドラッグ」を定義しようと試みたりする.けれど,そういう定義そのものでは,この問いに答えられない.さっき提案した定義では,コーヒーはドラッグだ.カフェインはたしかに特定のかたちで心の状態を変える.それどころか,中毒性すらある.でも,だから