小林昌樹(図書館情報学研究者) ■はじめの口上――正直に…… 三ヶ月前まで国立国会図書館という巨大館で調べ物担当をしていたのが私である。子どもの頃、本を書く人はどうして自分が体験したこと以外のことを書けるのかフシギだった。大学で文献注のある本に出会って、頓悟した。彼らは皆、調べ書きをしていたのである。でも、彼らはどうやって本を知ったのだろう? 膨大な図書を所有し、それらを全部読み、かつ憶えているのだろうか? 実はアメリカだと、図書館は文献参照(レファレンス)をサービスの中核にしており、どうやら本の調べ書きにはレファレンスが重要らしいぞ、と知ったのは、就職のため図書館情報学専攻に入り直してからだった。 今回、縁あって皓星社メルマガの連載記事に、先月まで15年ほど従事したレファレンス業務で身についた文献参照の技術――ここでは「参照スキル」と呼ぶ――について書き連ねることになった。30年弱、上記