新プラトン主義と「視覚」の問題圏(1) −−四元素説の周辺−− 前回のこのシリーズでは、ロジャー・ベーコンの光学理論を簡単にまとめてみた。作用素が媒質を介して形象を形作る、というのがその骨子で、受け手の視覚を構成するのは媒質であるというのが基本的な考え方だった。媒質は作用素によってその作用素の似姿になる。してみると、これがある種の形で質料形相論を踏襲していることは明らかだ。作用をなす大元は形相を与え、受け手との間に立つ媒質が質料としてその形相を受け取るという図式である。視覚を構成するには媒質がなくてならないとされる以上、媒質には大きな重みが付与される。13世紀の大きな流れとして、質料が単なる形相の受容体にとどまらず、なんらかの力を形相に遡及させうるものとして評価され直すという動きがあったわけだが(ドゥンス・スコトゥスなど:別稿の「個体化理論の今昔」を参照)、ベーコンもその思想潮流のただ中に