「日本で紹介されている作品の多くは、米国の悪徳画商にだまされ、押しつけられてかいた絵だ」 多色刷りのシルクスクリーンで街や人々を陽気に描き、長野冬季五輪やアトランタ五輪の公式ポスターを手掛けた画家ヒロ・ヤマガタ(50)=本名山形博導。米国・ロサンゼルス郊外のアトリエを訪ねると、意外な言葉で迎えられた。底抜けに明るい一連の作品の裏には、不本意な事情があったという。 窓から太平洋を見下ろす応接室。ヤマガタは絵の具で汚れたジーパン姿で現れた。「一九七八年にその画商の誘いで米国に来た。そんなことになるとは知らずに結んだ契約で十一年間縛られ、監獄にいるようだった。毎日、催促の電話。僕の生活を完全に支配した」 六七年に滋賀県の高校を卒業。上京して広告業界に身を置き、イラストをかいた。七二年、女性を追ってヨーロッパに渡るが、すぐに失恋。そのままパリで六年間、かいた絵を売って暮らした。シルクスクリーンの版