近年、クラシックの世界でじわじわと人気を高めているのが、「古楽」である。 そもそもクラシック自体が昔の古典を演奏するジャンルなのに、その中でもさらに古いってどういうこと?もしかしてかなりお堅い? いや、むしろその逆で、一番自由なジャンルかもしれない。既成のクラシックの権威に対する問い直し、時には反逆的な立場の表明として、20世紀半ばに始まったのだから。 わかりやすい例を挙げよう。かつてクラシック界の帝王といえばカラヤンであった。ベルリン・フィルを率いて、厚みのあるゴージャスでリッチな演奏のスタイルを作り上げた大指揮者。それは一つの理想だった。 それに対して、古楽系といわれるニコラウス・アーノンクールやフランス・ブリュッヘンらの音楽家たちが問い直したのは、響きそのもののあり方だった。 例えば、作曲家が生きていた時代の楽器(古楽器、ピリオド楽器と呼ばれる)を使う。弦楽器の場合、現代のスチール弦