「バガヴァット・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済」上村勝彦 ちくま学芸文庫 2007 自ら自己を高めるべきである。自己を沈めてはならぬ。実に自己こそ自己の友である。自己こそ自己の敵である。 (六・五) これは本当にいい本だ。数年ぶりに再読し、改めて感激した。名著である。 バガヴァットは「崇高なる神や偉人」、ギーターは「歌」という意味。マハーバーラタの第六巻の一部だが独立して読まれる。戦闘を前に怖気づく戦士アルジュナと、その御者で実は至高の存在であるクリシュナとの対話。 結果に執着せず、成功・失敗、幸不幸を平等同一のものとして見、自分の定められた行為に専心することを説く。平等の境地に達すれば苦しみから離れ、輪廻転生から解放される。すなわち解脱できる。 行為(カルマン、業)はよい結果をもたらすこともあるが、悪い結果も残る。インドでは行為には悪がともなう、罪深いことだという考えがあった。そこで