中国が今夏、香港への政治的弾圧を強めると、国連人権理事会(UNHRC)では真っ向から対立する2つの文書が加盟国の間で出回った。1つはキューバが策定した中国政府の動きを称賛するもので、53カ国が支持。もう1つは懸念を表明した英国策定の文書で、支持したのは27カ国にとどまった。 国際機関の制度を自国に優位な方向へと誘導しようと各国への働きかけを強める中国。香港問題を巡るこの一件も、中国がこれまで積み上げてきた「外交上の勝利」を示す直近の一例にすぎない。トランプ政権が第2次世界大戦後の国際秩序の多くから後退するのに伴い、長年にわたり組織的な外交攻勢を仕掛けていた中国が、その最大の受益者として台頭している。 中国は航空や通信、農業といった分野で世界標準を設定する国連機関のトップに自国の人材を積極的に送り込んできた。国連組織で影響力を握ることで、中国は国内外における自らの言動について、国際社会の追及