ナシーム・ニコラス・タレブが著した『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質』(望月衛 訳)を読んだ。米国でベストセラーとなった本の邦訳である。著者はレバノン出身で米国に滞在中のトレーダ兼客員教授である。本書を読んでいくと、彼が哲学、歴史、経済学、心理学、統計学、情報科学などに人並み外れた知識を持っていることよくわかる。 上下巻で構成される『ブラック・スワン』では、「黒い白鳥がいる可能性」と「黒い白鳥がいない可能性」を同じものとして扱っている専門家を全編に渡ってきびしく批判する 表題となった「ブラック・スワン」とは、オーストラリアで発見された黒い白鳥に由来するものであり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象を意味している。本書で扱っている内容は、人間には、黒い白鳥の出現に見られるようなランダム性、とくに大きな変動は見えない、という問題である。その理由として、人間には「プラトン性」