ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (8)

  • 厳重に階層が固定されたミツバチの社会を蜂視点で描き出す、神話的なディストピア文学──『蜂の物語』 - 基本読書

    蜂の物語 作者:ラリーン・ポール早川書房Amazon週刊少年ジャンプにはこれまで様々な打ち切り漫画が生まれてきたが、僕がその中でも最も打ち切りがショックだったのが、マキバオーなどで知られるつの丸による『サバイビー』だった。ミツバチを主人公に、その生態やスズメバチなどの敵との戦いをしっかりと描き出していく異色作。登場蜂物が俺達は群れなのだから一匹死んでも全体が生き残ればいいんだ!! といってスズメバチに向かって腕や足などを欠損させながらも戦いをやめず、虐殺されていくさまは子供心にトラウマを負ったものだ。サバイビー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:つの丸集英社Amazon結果的に打ち切りになってしまったわけだけれども、『サバイビー』を読んでいてミツバチって物語の主人公にするには格好の題材だな、と思わずにはいられなかった(『みなしごハッチ』の記憶も関係しているが)。というのも、虫

    厳重に階層が固定されたミツバチの社会を蜂視点で描き出す、神話的なディストピア文学──『蜂の物語』 - 基本読書
    usokooooo
    usokooooo 2021/06/23
  • ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』 - 基本読書

    宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:ケン リュウ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle作『宇宙の春』は、中国と米国、作家と翻訳家を股にかけて活躍する作家ケン・リュウの日オリジナル短篇集第四弾である。独立した話の短篇集なので、もちろん書から読んでも問題ない。第二弾、第三弾の短篇集が分厚かったことの反動か、今回は300p全10編とコンパクトになったが、その分シンプルに質の高い作品が揃っている。第一〜から第四冊までを並べた時に、第一と並ぶぐらい好きな巻となった。 作品の発表年としては2011〜20年のものが揃っている。全体をざっくり紹介しておくと、詩的に宇宙の壮大なスケールを歌い上げるような作品もあれば(「宇宙の春」)、未来のシミュレーションを行うSFプロトタイピング的な作品あり(「充実した時間」)、731部隊を「過去に起こったことを一度だけ実体験できる」特

    ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』 - 基本読書
    usokooooo
    usokooooo 2021/04/03
  • 時間旅行が当たり前になった世界特有の精神病理を描き出す、時間SF✕ミステリ──『時間旅行者のキャンディボックス』 - 基本読書

    時間旅行者のキャンディボックス (創元推理文庫) 作者:ケイト・マスカレナス発売日: 2020/09/10メディア: Kindle版この『時間旅行者のキャンディボックス』はケイト・マスカレナスのデビュー作にして、時間旅行が当たり前に存在する世界での様々な精神的な病を描き出す、時間旅行心理学とでもいうような領域を切り開いた珍しいタイプの時間SFである。 時間旅行はウェルズの『タイムマシン』以降SFではありふれたギミックだけれども、大抵の場合、時間旅行をして「何をなすのか」が重要になる。最近だと歴史改変合戦で自陣の勝利に導くことが目的のアナリー・ニューイッツ『タイムラインの殺人者』が出ているし、ジョディ・テイラー『歴史は不運の繰り返し』は、時間旅行を用いることで歴史事件の調査を行う人々が中心の物語である。一番よくあるのは、『STEINS;GATE』のように、大切な人を守るためや、死や世界の破

    時間旅行が当たり前になった世界特有の精神病理を描き出す、時間SF✕ミステリ──『時間旅行者のキャンディボックス』 - 基本読書
    usokooooo
    usokooooo 2020/09/23
  • 今年も早川書房が海外SF作品の電子書籍セールをはじめたので、新刊を中心におすすめをピックアップ! 2019年版 - 基本読書

    ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) 作者:ウィリアム ギブスン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/04/30メディア: Kindle版この数年は毎年の恒例となっている早川書房の海外SF作品電子書籍セールが今年も(2019年)このぎりぎりの年の瀬に始まったので、SFマガジンの海外SF書評欄の連載担当として今年もおすすめをピックアップいたします。全体は下記参照。 www.hayakawabooks.com 毎年セールの顔ぶれが違うのでおすすめする作品もがらっと変わってくるのだけれども、今年ありがたいのはウィリアム・ギブスンによるサイバーパンクの金字塔『ニューロマンサー』や『クローム襲撃』や『ディファレンス・エンジン』が入っていることかな。他、アシモフのファウンデーションシリーズや、ヴォネガットやクラークやディックの諸作品など、有名どころが勢揃い。 特にギブスンの作品はどちらかと

    今年も早川書房が海外SF作品の電子書籍セールをはじめたので、新刊を中心におすすめをピックアップ! 2019年版 - 基本読書
    usokooooo
    usokooooo 2019/12/25
  • ヒューゴー賞を三年連続で受賞し、荘厳なアートワークで圧倒する化け物級のエピック・ファンタジィ・コミック──『モンストレス』 - 基本読書

    モンストレス vol.1:AWAKENING (G-NOVELS) 作者: マージョリー・リュウ出版社/メーカー: 誠文堂新光社発売日: 2017/12/22メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るこの『モンストレス』はいわゆるアメリカン・コミックで、中国アメリカ人のマージョリー・リュウが原作、日人のタケダサナが作画をそれぞれ担当して、現在も刊行が続いているファンタジィ・シリーズである。最新刊は現状三巻まで。 で、一巻が出た頃から話題になっていたのだが、その後の快進撃が凄い。その年のヒューゴー賞のグラフィックストーリー部門を受賞。アイズナー賞、英国幻想文学大賞など数々の栄誉ある賞を獲得し続け、話題はその後も継続し続けている。たとえばヒューゴー賞は、3年連続(2017、18、19)で受賞、18年についてはグラフィックストーリー部門とプロアーティスト部門で原作者と作画者が同時受

    ヒューゴー賞を三年連続で受賞し、荘厳なアートワークで圧倒する化け物級のエピック・ファンタジィ・コミック──『モンストレス』 - 基本読書
    usokooooo
    usokooooo 2019/09/24
    元々英語で出版されたコミックを邦訳してるから文字組みはしょうがなくない…?日本コミックの英語版とかこんな感じじゃん
  • SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集──『なめらかな世界と、その敵』 - 基本読書

    なめらかな世界と、その敵 作者: 伴名練,赤坂アカ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行この商品を含むブログを見るこの『なめらかな世界と、その敵』を端的に紹介すれば、SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集である。とはいえ著者伴名練の名は、SFファン以外は聞いたことはないだろう。既刊行作は『少女禁区』という約10年前に刊行された中短篇集一冊のみで、その後も企画物のアンソロジーに散発的に短篇を発表しるのみだったから、普通は知る機会は多くはない。 だが、SFファンの間では、書の刊行前から伴名練の名は異常なほどの熱気でもって知られていた。というのも、商業発表作こそ少ないものの、同人誌に毎年のように新作短篇を発表しており、その作品の出来がまた凄まじかったからだ。それまでのSFの先行作を緻密かつ複雑に折り込み、舞

    SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集──『なめらかな世界と、その敵』 - 基本読書
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    usokooooo 2019/08/26
  • 人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』 - 基本読書

    雪降る夏空にきみと眠る (上) (竹書房文庫) 作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る雪降る夏空にきみと眠る (下) (竹書房文庫) 作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る『雪降る夏空にきみと眠る』はジャスパー・フォワードの久しぶりの邦訳作品にして、幻想、奇想、SF要素がてんこ盛りになった極上のオモシロ小説だ。その世界観の作り込み、プロットの巧妙さ、次から次へと明かされる驚きの事実とその演出、出てくるキャラクタはみなジョジョばりにアクが強くセリフ回しも最高と、どこを取り上げても超一級で、まず一言感想をいうなら「超おもしろい!!!!」って感じだ。

    人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』 - 基本読書
    usokooooo
    usokooooo 2019/07/04
  • 魔術的な描写で小説の可能性を広げる短篇集──『オブジェクタム』 - 基本読書

    オブジェクタム 作者: 高山羽根子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/08/07メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る高山羽根子さんのデビュー作である『うどん キツネつきの』に続く第二作品集がこの、短篇を3つ集めた『オブジェクタム』である。デビュー作からして新人とは思えないような円熟した技量、さらには奇想、幻想譚の中でもオンリーワンな領域を開拓し続けていたのに、その後発表する短篇、中篇はまだまだここからが領発揮だと言わんばかりにどれも傑作揃いで、第二作品集はもうずっと待ち望んでいた一冊だ。 3篇とも、細部はぼやけてしまって覚えていないが美しい過去の記憶のように、どこか幻想的な空気の漂う物語である。すでに雑誌等で読んでしまっていたが、眠れぬ夜のためにとっておいた書を深夜3時ぐらいにモソモソと引っ張り出して読むのは至福の体験であった。そのおもしろさをどのよ

    魔術的な描写で小説の可能性を広げる短篇集──『オブジェクタム』 - 基本読書
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    usokooooo 2018/08/16
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