「正しさは人それぞれだから」と対話をやめてしまう現代人。そのように思考を止めることは、権力者による力任せの変更を容認することと同じです。相対主義と普遍主義のどちらにも距離を取りながら、真ん中の道を進んでいく、『「みんな違ってみんないい」のか?――相対主義と普遍主義の問題』(ちくまプリマー新書)より、「はじめに」を公開します。 正しさは作っていくものである 昨今、「正しさは人それぞれ」とか「みんなちがってみんないい」といった言葉や、「現代社会では価値観が多様化している」「価値観が違う人とは結局のところわかりあえない」といった言葉が流布しています。このような、「人や文化によって価値観が異なり、それぞれの価値観には優劣がつけられない」という考え方を相対主義といいます。「正しさは人それぞれ」ならまだしも、「絶対正しいことなんてない」とか、「何が正しいかなんて誰にも決められない」といったことさえ主張