先日「なぜ泣きゲーではしばしば樹木が奇跡の象徴として登場するのか:Key『Rewrite』を見すえて」という問いが投げかけられていたので、少しレスなどしてみる。 樹木は、エリアーデにおいては世界の中心、フレイザーにおいては生命ならびに生と死の時間的サイクルを表すものであるとされる。ゆえにそれは、ある閉じたアトモスフィアの中において生と死のサイクルを描き出す「泣きゲー」というジャンルにおいて、最重要の神話的表象――物語の基点や収斂点として機能しうる。と、大雑把に云えばそうなる。*1 では、具体的にはどのように機能するのか、Key「kanon」を題材として解説したい。これはほんの一例であり、実際にはさまざまなあり方が考えられるが、「樹」と「奇跡」が緊密に絡み合っている作品であるので、これに関して考察する際に何らかの知見は得られると思う。 「kanon」における丘の上の樹は、当ゲームのメインヒロ