落ち込んでいる人に対して、「心配するなよ元気を出せ」と口先でアドバイスしても効果がない(1,P218)。本人がポジティブな感情を感じていなくても、無理に作り笑いをしたり、ポジティブな言葉だけを発していると、心は傷を受けてストレス・ホルモンに浸される(1,P257)。ネガティブな感情をゼロにしようとして偽りの笑顔を演じるポジティブ・シンキングは現実から遊離している。生物的にネガティブ感情がゼロということはありえないからだ(1,P196)。 ネガティブ感情は自然なものだし、生物的な根拠がある。恐れや逃走本能、怒りや攻撃本能、憎悪や忌避行動といったネガティブ感情がなければ、敵に襲われたときに生物はとても生きのびることができなかったであろう(1,P44)。だから、大切なモノを失ったときに嘆いたり、不正に対して怒りを覚えるといったネガティブ感情を持つことは自然なことだし健全なのだ(1,P224)。