2024年5月15日、トスカーナの丘陵地帯に広がるブドウ畑 photograph by Giulio Origlia/Getty Images 2022年3月に刊行された『イタリアのテリトーリオ戦略:甦る都市と農村の交流』(木村純子、陣内秀信・編著、白桃書房〔法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書〕)で論じられている「テリトーリオ」という概念は、一口に論じるには、あまりに豊かな概念だ。書籍の紹介文にはこうある。 イタリアでは70年代に入ってから、経済性偏重の都市政策の結果、都市の過密と農村の過疎が顕著となった。それをきっかけに、歴史、文化、環境、住民意識等の非経済的な価値を重視する地域政策への転換へと舵を切ることになる。その鍵となったのが、テリトーリオ概念である。これは、地域の文化、歴史、環境、その土地の農産物の価値を高め、都市と農村の新しい結びつきを生む社会システム概念であ