「喫酒幾星」は、京都・祇園の白川近くにあるバーだ。蒸留酒にさまざまな植物の香りを溶かし込んだ薬草酒(薬草リキュール)を専門としている。 薬草リキュールは、カンパリなどの一部の銘柄を除けば、日本ではまだ馴染みの薄いお酒だ。筆者自身、はじめて客として喫酒幾星を訪れたとき、民芸のニュアンスを感じる内装に心地よさを覚えると同時に、バックバーに並ぶお酒のボトルが見知らぬものばかりであることにすこし緊張した。 何を飲もうか悩んでいると伝えると、店主は普段のお酒の好みをこちらに尋ねた上でいくつかのリキュールのボトルを手にとり、その香りを1本ずつ試させてくれた。すると、「まだ土のついた木の根の青々とした匂い」「花束に顔を埋めているかのようなバラの匂い」など、そのどれもが違った芳香を持っていることに強く驚かされた。 それらの香りをヒントに飲みたいものを伝え、出していただいたカクテルやリキュールは絶品で、丁寧