昔から、日本人は働き過ぎと言われてきた。過酷な長時間労働こそ忌避されるようになったものの、「仕事に無我夢中で向き合う」姿勢そのものは、日本社会においていまも礼賛される傾向にある。SNSやビジネス系メディアには熱い仕事論があふれ、たくさんの「いいね」がつく。 もちろん、仕事にバリバリ向き合う人がいてもいい。ただ、それが「正解」であるかのような空気は、少し息苦しい。仕事至上主義の社会は、デキる人にとっては天国だが、デキない人には肩身が狭い。誰もが、自分のやれる範囲でマイペースに仕事をする。そんなおおらかさがあってもいい。 漫画『無能の鷹』(講談社)を読んでいると、そんな気持ちにさせられる。ITコンサル会社に勤める主人公の鷹野ツメ子は、いかにも仕事がデキそうなオーラを醸し出しているが、実際はまったくの無能。しかし、無能な自分を恥じることなくつねに堂々としていて、成長しようという気概もない。鷹野を