土壌の肥沃さと土壌浸食は、歴史の流れを大きく変えてきた―より具体的に言えば、「土壌劣化」と「加速する侵食」という双子の問題が文明の運命を左右してきた。“泥に刻まれた歴史”を紐解くことで、それが見えてくる。 「土」をキーワードに歴史が解き明かされる様は、ときに鼻づまりが解消したかのような快感があり、とてもおもしろい!同時に、人間の業、とも呼べる「歴史の繰り返し」に恐れ慄く。 「あらゆる文化(芸術・科学)の基礎を成している文化とは農業である」と『栽培植物と農耕の起源』の著者、中尾氏は説いた。『銃・病原菌・鉄』という本は「人類の歴史」という大きなテーマを扱ったものだが、著者のダイヤモンド氏は全体の1/3を農業の成り立ちや栽培植物・家畜の伝播に割いていた。そのくらい説明の要する重要なポイントだということだろうと思う。 文明は、農耕が起こって、人口を養うに十分な食料と、かつ食料の余剰・備蓄が確保でき