国家も民主主義も要らない 90年代になると、こうした加速主義的な思想を肯定し、さらにラディカルに突き詰めた哲学者が現れる。それがニック・ランドである。 このニーチェやドゥルーズ&ガタリから影響を受けたイギリスの哲学者は、資本主義の暴力的な力を加速度的にドライヴさせることで未知の〈外部〉へのアクセスを目指す思想を、熱に浮かされたような狂乱的な文体とともに打ち出していた。 ランドにとって、資本主義とは閉じたポジティブ・フィードバックの回路であり、また惑星規模の人工知能でもあった。その崇高な機械仕掛けは、限界のない怪物的な力で人間主体を駆逐していく。ランドは言う。「人間、それは乗り越えられるべき何か、すなわち悩みの種であり重荷である」(「Meltdown」)。 ランドの徹底したアンチ・ヒューマニズムは、サイバネティクス、バイオテクノロジー、サイバーパンクSFなどを取り込みながら未来から侵食してく
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