「―御覧なさい。この手をただ、こうしさえすればいいのです」 ある時雨の降る晩、若い魔術の大家、ミスラ君が魔術を見せてくれました。 ミスラ君は、魔術は誰でも造作なく使える、と言います。 ただ、習得するのには一つ条件があったのでした。 魔術/芥川竜之介・作/宮本順子・絵/偕成社 ミスラ君というのはインド人で、竹藪に囲まれた古く小さな西洋館に住んでいました。 うす暗いランプの光で照らされた部屋で、ミスラ君は摩訶不思議な魔術を使ったのですが、感嘆する私にミスラ君は、 「私の魔術などというものは、あなたでも使おうと思えば使えるのです」と言うのでした。そこで是非、魔術を教えてもらおうと頼みます。すると、 「ただ、欲のある人間には使えません。ハッサン・カンの魔術を習おうと思ったら、まず欲を捨てることです。あなたにはそれが出来ますか」 「出来るつもりです」と私は答え、その晩は魔術を教えてもらうために、御婆
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