本や映画を見た感想というものは、ごくごく個人的なもので、それは受け手の経験や状況から生じたフィルターを通じて初めて個人の中に伝達される。だから同じ映画や本を見ても、例えばAという人物とBという人物が全く相違の無い感想を持つということは有り得ない。AとBは別の個を持つ人間だからである。そして経験や状況というものは良かれ悪しかれ時を経て変化する。だからAという人物が同じ本を読んでも、例えば10代の時に呼んだ感想と20代に読んだ感想とが全く相違が無いということは無い。多少なりとも変化しているのが当たり前だ。 夏目漱石の「それから」という小説を初めて読んだのは高校生の時だ。今までに何度か読み返している。少し前、本の整理をしていて発見し、久々に読み返してみようと思った。「それから」は、激しい小説である。静かで壮絶な物語である。 主人公代助は、大学を卒業したが何の職業にも就かず実家からの援助にて暮らし