ふわりと素朴な質感の「更紙」、皺や斑を帯びた革、表面加工しない“素”の金属―。MUCUの素材には、どれも奥深い表情がある。時に不均一だったり、ざらざらしていたり、いわゆる高級ブランドのスキのない美しさとは必ずしも一致しない。それが歳月とともに色や形を変え、ますます豊かな味わいを醸し出す。 例えば、よく使い込んだレザーリングノート。切り出したままの厚手の革表紙は程よく角がとれ、強烈な個性を主張していた表面は馴染んで絶妙な艶を帯びる。メタリックボールペンは精緻なつくりに加え、時を経た真鍮や鉄ならではの風合いをまとい、一段と存在感を高める。その抑制したかっこよさといったらない。 使い手が大切に使い、変化を楽しみながら「育てる」ことで生まれる価値。その核となるのが、徹底した素材へのこだわりだ。紙や革、金属棒といった素材の「ちから」が使い手を惹きつけ、長く使われることでモノ本来の魅力を導き出す。