書評:小倉充夫著『自由のための暴力—植民地支配・革命・民主主義』(東京大学出版会、2021年) 舩田クラーセンさやか 本書の特徴 本書は、日本で国際社会学をうちたて、アフリカ地域研究に軸足を置き続けてきた小倉充夫氏のもっとも野心的な著作である。それは、タイトルに如実に表れている。英語では『自由と暴力』と訳されているこの本が、日本語ではあえて『自由のための暴力』とされている点に、小倉氏のさまざまな想いが込められていることを想像するのは難しいことではない。 他方で、このタイトルに戸惑いを覚える人は少なくないだろう。 まさに、それこそが小倉氏の狙いと考えられる。本書における文章の潔さも含め、小倉氏の過去の著作を知っていれば、氏によるディシプリンと地域研究を超えた長年にわたる探求が、読者を導くある種の到達点に、感嘆の声を漏らさざるを得ないだろう。後述するように、小倉氏は本書も途中経過と考えている。