ブックマーク / book.asahi.com (50)

  • 「核燃料サイクルという迷宮」書評 「能天気な技術観」丹念に検証|好書好日

    「核燃料サイクルという迷宮」 [著]山義隆 東京電力福島第一原発からは大量の処理水が海洋放出されているが、この件で「安全性に問題はないから流せばよいのだ」と居丈高に言い放つ論者が目立ったことには、愕然(がくぜん)とした。廃炉のめどは立たず、近隣国の支持も得られず、漁業者との約束も破って放出するのだから、まさに痛恨である。だが、この恥ずかしい「敗戦国」で、被災地への負い目も忘れ、むしろ勝ち誇る者さえいるのはなぜか。 このような倒錯は、書が明快に示すように、もともと戦前から存在していたものである。「資源小国」というコンプレックスを抱いた日は、資源を求めてアジアでの侵略戦争に到(いた)り、戦後は原子力政策を推進した。「もたざる国」日にとって、原子力のエネルギーは劣位を逆転する魔法と信じられたのである。 だが、原発稼働には核廃棄物という難題がある。そこで使用済み燃料を再利用する「核燃料サイ

    「核燃料サイクルという迷宮」書評 「能天気な技術観」丹念に検証|好書好日
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    wkatu 2024/09/08
  • イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂

    記事:平凡社 パレスチナ・イスラエル問題に関するオンラインセミナー「パレスチナ連続講座」に登壇する東京経済大学教授の早尾貴紀さん 書籍情報はこちら 《前編はこちらから》 ホロコーストを経験したユダヤ人とイスラエル 「ホロコーストを経験したユダヤ人が、どうしてジェノサイドをする側になるのか」という質問をよく受けます。そのことについて、2023年に日でも公開された『6月0日 アイヒマンが処刑された日』という映画を例にお話しします。ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンは1960年に逮捕され、62年にイスラエルで処刑されました。映画ではその死体を焼却する炉を作る過程が描かれます。映画に登場する鉄工所の社長、作業員、臨時に雇われた少年工は、それぞれ、「イスラエル国民」を構成する3階層のユダヤ人グループに属しています。 1つめのグループは、イスラエルの建国運動を中心的に担った人たちです。ヨーロッパ出身で

    イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂
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    wkatu 2024/06/09
  • 民主主義のため人間の狂気を信じる――日野行介『調査報道記者』|じんぶん堂

    記事:明石書店 『調査報道記者――国策の闇を暴く仕事』(明石書店) 書籍情報はこちら 調査報道からは逃れられない 例えばあなたは地方公務員、あるいは中央官庁の一職員であったとする。あなたが配属された部署では、どう考えてもつじつまの合わないミッションが与えられる。 何十万人もが対象になる避難計画を、受け入れ先の自治体と調整して「あたかもそんな避難オペレーションが可能である」かのように描かなければならない。あるいは、あなたの部署はかつてない大規模公害事件の被害評価を議論する会議を主催しなければならない。その会議で何か問題のある発言があれば住民や市民団体からの猛烈な非難にさらされることが目に見えている。 あなたはそもそも、災害避難の仕事がしたくてその役所に入ったわけでも、公害被害の評価が専門でもない。一生懸命勉強して、就職難の中できるだけ安定した仕事に就きたいと、公務員試験に合格したのだ。何とか

    民主主義のため人間の狂気を信じる――日野行介『調査報道記者』|じんぶん堂
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    wkatu 2022/09/22
    『情報提供者たちが、そんな葛藤とジレンマの中で、通常ではありえない「狂気」の選択をしたことが想像できる』本邦の社会は内部告発者に冷たいので確かに「狂気」と言いたくなる
  • 「まとまらない言葉を生きる」荒井裕樹さんインタビュー 差別・人権…答えが見つからないものこそ言葉に|好書好日

    荒井裕樹さん(人提供) 荒井裕樹(あらい・ゆうき) 1980年東京都生まれ。二松學舍大学文学部准教授。専門は障害者文化論、日近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。著書に『隔離の文学――ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『障害と文学――「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館)、『生きていく絵――アートが人を〈癒す〉とき』(亜紀書房)、『障害者差別を問いなおす』(筑摩書房)、『車椅子の横に立つ人――障害から見つめる「生きにくさ」』(青土社)など。 世の中の「言葉が壊れている」 ――荒井さんは障害者運動家などの被抑圧者の表現を研究しています。今作のまえがきは「『言葉が壊れてきた』と思う」という一文から始まりますが、最近そのように感じることは多いでしょうか? ここ何年もしんどい言葉が増えてきたなと思っていました。生活保護バッシング、障害者バッシング、ヘ

    「まとまらない言葉を生きる」荒井裕樹さんインタビュー 差別・人権…答えが見つからないものこそ言葉に|好書好日
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    wkatu 2022/04/23
  • 訳者解題の後で、『人間狩り』について訳者が改めて考える2、3の切り口|じんぶん堂

    記事:明石書店 『人間狩り―― 狩猟権力の歴史と哲学』(明石書店) 書籍情報はこちら 『人間狩り』、フィクション? 『人間狩り』というタイトルで何を思い浮かべるだろうか。断じて哲学書ではない、ように思われる。むしろ思い浮かべるなら、ホラー映画のジャンルだろう。例えば、アメリカで昨年3月に公開され、日でも同年10月に封切られた『ザ・ハント』(監督:クレイグ・ゾベル)は、1932年の『猟奇島[原題:最も危険なゲーム]』(監督:アーヴィング・ピッチェル、アーネスト・B・シュードサック)以来、世界中で制作され鑑賞されつづけているこのジャンル映画の最新版のひとつである。 書『人間狩り』の副題は、「狩猟権力の歴史と哲学」という、それだけでは内容を飲み込みづらいものではあるが、それでも、ホラー映画やスリラー映画の原案では必ずしもないということを十分に示している。ただしだからといって、書がまったくそ

    訳者解題の後で、『人間狩り』について訳者が改めて考える2、3の切り口|じんぶん堂
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    wkatu 2022/01/10
    『主人と奴隷の弁証法では、意識の関係は二項対立であるのに対して、狩猟権力においては、三項関係の図式になっている。ヘーゲルに向けられた…シャマユーの批判は…第三者を考慮しないフーコーにも向けられたもの』
  • 「統計データの落とし穴」書評 木を見て森を見ない誤用に注意|好書好日

    統計データの落とし穴 その数字は真実を語るのか? 著者:ピーター・シュライバー 出版社:ニュートンプレス ジャンル:数学 「統計データの落とし穴」 [著]ピーター・シュライバー 90年代のニューヨーク市警に、取り締まりや犯罪データの収集システムが確立した。ある分署長はそれを使い、警官や部署の活動を、数値評価し始めた。もちろん警官の行動は変わっていった。無意味な職務質問を増やしたり、重大犯罪を微罪として扱ったり、被害者が被害届を出すのを邪魔するようになったのだ。数値ノルマを達成するため、そのような行動は署の全体でなされた。数値評価を導入すると、人はそれに応じて行動を変える。結果として、その数値評価を通じて実現したかったことと、反対のことだって起こる。 数値評価は大切なように思える。なんせ数値は、数値で表せないものと比べて、はるかに見えやすいし、分かりやすいから。だから人は数値を見て、そこに答

    「統計データの落とし穴」書評 木を見て森を見ない誤用に注意|好書好日
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    wkatu 2021/09/19
  • 「哲学の女王たち」書評 なぜ白人男性ばかりだったのか|好書好日

    「哲学の女王たち」 [編]レベッカ・バクストン、リサ・ホワイティング エーディト・シュタインの章がとくに衝撃的だ。 ユダヤ人家庭に生まれたシュタインは、哲学者フッサールのもとで博士号を取る。彼の論文作成でも重要な役割を果たす。だが功績は認められず、フッサールは彼女の大学教員資格申請を却下。シュタインはそののち修道女となるが、アウシュビッツのガス室で人生を終えた。わたしたちは、シュタインの人生は変えられないが、いまも残る大学の閉鎖性は変えられよう。書はそう語りかける。 女性の哲学者を並べたこのは、白人男性ばかりが並ぶこれまでの哲学史への異議申し立てだ。教育から排除されてきたため数こそ少ないが、女性の哲学者は大昔からいる。だが正当に評価されてはこなかった。 登場するのは、古代のディオティマに始まる20人。アーレントの人種差別を指摘するように、女性哲学者の偶像化が目的ではない。 白人男性を白

    「哲学の女王たち」書評 なぜ白人男性ばかりだったのか|好書好日
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    wkatu 2021/07/18
  • 「中国戦線、ある日本人兵士の日記」書評 一兵卒が記録した総力戦の実相|好書好日

    中国戦線、ある日人兵士の日記 1937年8月〜1939年8月侵略と加害の日常 著者:小林 太郎 出版社:新日出版社 ジャンル:ノンフィクション・ルポルタージュ 「中国戦線、ある日人兵士の日記」 [著]小林太郎 [編]笠原十九司、吉田裕 1937年から8年余りに及んだ日中の総力戦。広大な戦場の実相は、なおつかみがたい。一兵卒の従軍日記である書は、その欠落を埋めてくれる。 著者は丸2年、南京攻略戦や徐州作戦など、戦争前半の大きな作戦に従い、華北・華中を目まぐるしく転戦する。除隊後、自ら撮った写真を多数貼り込んで記録として残した。その全文と詳しい解説により、戦場を日常として生きた兵士の目線が浮かびあがる。 当時は珍しい大学出の著者も、「東洋の平和の為(ため)」と戦争目的を疑わず、万歳の歓呼に「勇ましく戦はねば」と自らを鼓舞して出征した。戦闘では敵愾心(てきがいしん)が高揚して、敵の被害を

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    wkatu 2021/05/25
  • 「憲法解釈権力」書評 内閣・首相らの「遵守の型」追究|好書好日

    憲法解釈権力 [著]蟻川恒正 あらゆる公権力担当者の権限行使の前提には、必ず自己の権限についての「解釈」が介在する。授権規範の内容を決めるのは、その直接の作り手が込めた主観的意味ではなく、より上位の規範をも視野に入れた法体系全体であって、かかる客観的意味を読み取るためにも、「解釈」の営みは不可欠である。けれども、国内法上その解釈を枠づける上位規範のない憲法を、立法・行政・司法の頂点にたつ人間たちが自己解釈するとき、「解釈」作用に含まれた「権力」性の契機は極大化する。「憲法解釈権力」とは、その謂(いい)である。 最終的な合憲性判定権をもつ最高裁判所が審査を放棄する「統治行為」の場合には、憲法解釈権力は統治の中心である内閣に移動し、とりわけ「安倍一強」の構図のもとでは、首相がその総攬(そうらん)者としての自意識を抱いた。他方で、立憲主義とは公権力担当者の自己拘束の思想であり、内閣では内閣法制局

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    wkatu 2020/12/28
  • 「アイヌを知る」とは、本でひもとく 文化担う人々への抑圧も見よ 北原モコットゥナシさん|好書好日

    アイヌ施策推進法はアイヌの誇りの尊重を掲げる。その誇りは、どのように損なわれ、どう回復できるのか。抑圧が常態化した状況では、加害者も被害者も俯瞰(ふかん)的な視点を持ち難い。 阿寒湖畔アイヌコタン出身の瀧口夕美は、そうした経験を『民族衣装を着なかったアイヌ』に率直に書いている。「アイヌとは?」「あなたはアイヌ?」という気軽な問いは厄介だ。そうだと言えば「では純粋か?」と言葉が続く。反対に「純粋な和人とは」と問われたら答えられるのだろうか。こうした問いを一方的に向けること自体、対等な関係ではない。 「アイヌらしさ」とは、例えば容姿と生活習慣、血縁などか。だが、容姿も生活習慣も世代を経れば変化することがある。血縁やアイデンティティーは有(あ)っても見えない。すると「いる」と気づかれず、言っても気にされないこともある。アイヌの認知度が低い土地で育ち、言語も知らなければ、周囲との違いを説明するの

    「アイヌを知る」とは、本でひもとく 文化担う人々への抑圧も見よ 北原モコットゥナシさん|好書好日
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    wkatu 2020/10/26
  • 「女性たちの保守運動」書評 活動内部に存在する複雑な断層|好書好日

    女性たちの保守運動 右傾化する日社会のジェンダー [著]鈴木彩加 特に今世紀に入って、「保守運動」への女性の参入が目立つようになった。そうした女性たちの行動は、フェミニズムなどによって「主婦である普通の私」が脅かされることへの不安から説明されることが多かったが、著者はそこに疑問を投げかける。 女性を保守運動につなぐ回路をより詳細に把握すること、そして同じ運動内での経験の男女差をも明らかにすることを目指して、書は雑誌、動画、インタビュー、参与観察など複数のデータを駆使している。 具体的な研究対象は、男女共同参画への反対運動と、「慰安婦」問題への抗議活動である。 前者については、「愛情に結ばれ」「支え合い、助け合う」家族内の人間関係をもっとも重視する「主婦」たちと、それに加えて家族を社会・国家の基盤として位置づける「女性知識人」たちという二つの層が見いだされる。「男性知識人」と「主婦」の間

    「女性たちの保守運動」書評 活動内部に存在する複雑な断層|好書好日
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    wkatu 2020/10/20
    『「恥」であるはずの「売春」を公言し政府などからの支援を得ていることをもって「慰安婦」を批判する女性活動家らの論理には、日本社会における性規範の内面化が表れている』が、決して男と同じ立場にはなれない
  • 「公開性の根源 秘密政治の系譜学」書評 統治の秘密、繰り返される課題|好書好日

    ISBN: 9784778316006 発売⽇: 2018/04/20 サイズ: 20cm/548,8p 『公開性の根源 秘密政治の系譜学』 大竹弘二〈著〉 キーワードは「統治の秘密」である。秘密といえば、隠蔽(いんぺい)、改ざん、廃棄といった最近馴染(なじ)みの言葉がすぐに思い浮かぶ。 書は、「統治の秘密」の系譜を16~17世紀の「アルカナ=秘密」と呼ばれる統治技術や国家理性論まで遡(さかのぼ)る。取り上げられるのは、思想史の古典的作品に限らず、ドイツ悲劇、オペラ、探偵・スパイ小説、戯曲と多岐にわたる。ライプニッツの官房学者としての側面、カフカの社会保険の実務家としての活動にも光が当てられ、主題をめぐる多彩な掘り下げが書の魅力である。 もちろん統治権力には濫用(らんよう)や腐敗の危険がある。主権は立法にあるとしたJ・ボダンは法規範によって統治を制御しようとし、I・カントは「統治の秘密

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    wkatu 2020/06/29
  • 「日本の納税者」書評 「納税は権利」根付かぬ背景は|好書好日

    の納税者 [著]三木義一 「納税は国民の権利だ」というと、怪訝(けげん)な顔をされる読者も多いだろう。「納税は義務だ」というのが、我々の常識的な受け止めだからだ。実際、日国憲法第30条には、国民の納税義務が謳(うた)われている。 だが、欧米では実は、市民革命を経て納税は「国民の権利」として確立したのだ。つまり、王政(国家)の無謀な課税から保護される権利、国民の同意なしに課税されない権利、納税するからには予算編成に参画し(議会の役割)、支出を監視し、コントロールする権利である。これは「主権者」としての国民の権利行使を、財政面から担保している。 にもかかわらず、来は国家に対して納税者主権を要求すべき議会が、日では逆に戦後憲法の制定過程で、政府原案にもなかった納税義務規定を入れさせたというショッキングな事実も、書によって明かされている。 この結果、納税者の権利保護はきわめて薄弱である

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    wkatu 2020/06/08
  • 「本当の貧困探し」のわな シリーズ「子どもの貧困(全5巻)」から貧困研究の立場を考える|じんぶん堂

    記事:明石書店 シリーズ「子どもの貧困」 書籍情報はこちら 「当の貧困探し」には、わながある ところで、貧困について話をすると、しばしば「それは当の貧困なのか」という素朴な質問をぶつけられる。含意されていることは、いまの日貧困(例えば、学者が騒いでるやつ)は大した問題ではなくて、「もっと深刻な貧困(例えば、飢餓に近いイメージ)」が「当の貧困」だという感覚である。また、貧困問題に取り組みたいと思う人が、個別の事象を前にして、これは貧困かどうかと思い悩むこともある。これもまた、貧困を考えるときに「当の貧困」を基準にしたい、という感覚である。こうした感覚は、「当の貧困探し」を招く。 もちろん、「当のものかどうか」を問うことは大切である。権力の座にある人が発信する情報の真偽を問わなければ、民主主義が危うくなる。これは歴史を振り返っても今の社会を見ても、身に染みる現実である。きれいに

    「本当の貧困探し」のわな シリーズ「子どもの貧困(全5巻)」から貧困研究の立場を考える|じんぶん堂
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    wkatu 2020/06/02
  • 「戦前反戦発言大全」髙井ホアンさんインタビュー 落書きや投書に残された戦時下の庶民の本音|好書好日

    髙井ホアン(たかい・ほあん)小説家・作家・ライター 1994年生まれ。日人とパラグアイ人のハーフ。高校時代から反権力・反表現規制活動を行う中、戦前の庶民の不敬・反戦言動について知り、そのパワフルさと奥深さに痺れて収集と情報発信を開始。2013年からTwitter上で「戦前の不敬・反戦発言Bot」「神軍平等兵 奥崎謙三Bot」などを運営中。小説家として株式会社破滅派よりJuan.B名義で電子書籍『混血テロル』『天覧混血』を刊行中。 パラパラとページをめくり、たまたま目に入った一文に大きく頷いてしまう。 「忠義を尽くして死んで金鵄勲章を貰えば何になるか、戦争なんか馬鹿のすることだ」 昭和13年5月、宮崎県で45才の男性が乗合自動車中で発したもので、言ったこの人は禁錮4カ月の刑の処されている。 『戦前反戦発言大全』(合同会社パブリブ)と題された600ページ近い分厚いには、昭和12年~19年に

    「戦前反戦発言大全」髙井ホアンさんインタビュー 落書きや投書に残された戦時下の庶民の本音|好書好日
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    wkatu 2020/04/22
    『ホアンさんがのめり込んでいく理由の一つが、当時の社会批判が都会に住む一部のインテリによるものではなく、工場で働く労働者などは勿論、地方の農民たちや主婦など、ごく普通の人が多いことだった』
  • 「ドラえもん論」杉田俊介さんインタビュー 歴代作品から読み解く、のび太の「弱さ」が愛される理由|好書好日

    文:若林良、写真:斉藤順子 杉田俊介(すぎた・しゅんすけ)批評家 1975年生まれ。神奈川県出身。労働問題やサブカルチャーについての論考を数多く執筆。著書に『フリーターにとって「自由」とは何か』(人文書院)、『宮崎駿論 神々と子どもたちの物語』(NHK出版)、『ジョジョ論』(作品社)など。2019年、ヘイト問題を考える雑誌『対抗言論』(法政大学出版局)を創刊。 とにかく怖かった「のび太の海底鬼岩城」 ――杉田さんと「ドラえもん」の出会いはいつ頃でしたか。 小学校3年生に上がる頃、映画4作目の「のび太の海底鬼岩城」を見たことが大きいですね。それ以前もテレビで見てはいましたけど、映画のインパクトがとにかく強かったんです。 ――どのような感想を抱かれたのでしょうか。 怖かった。その一言です。テレビで見る「ドラえもん」とは全然違うテイストでした。スネ夫とジャイアンが海底で、テキオー灯(どのような世

    「ドラえもん論」杉田俊介さんインタビュー 歴代作品から読み解く、のび太の「弱さ」が愛される理由|好書好日
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    wkatu 2020/03/28
  • 『草はらに葬られた記憶「日本特務」』書評 対日協力者の苦難と民族の分断|好書好日

    草はらに葬られた記憶「日特務」 日人による「内モンゴル工作」とモンゴル人による「対日協力」の光と影 著者:ミンガド・ボラグ 出版社:関西学院大学出版会 ジャンル:歴史・地理・民俗 草はらに葬られた記憶「日特務」 日人による「内モンゴル工作」とモンゴル人による「対日協力」の光と影 [著]ミンガド・ボラク モンゴルの草原を馬で走ったことがある。遠くに馬の群れのように走る一団がいて、ラクダだった。砂漠地帯ではラクダを馬代わりに使う。南下すればゴビ砂漠を含む中国の内モンゴル自治区が広がっていることを実感した。日ではほとんど忘れ去られているが、内モンゴルは近代日が長らく関与し続けた地域だ。東部は旧満州国(中国東北部)に組み込まれ、組み込まれなかった西部も関東軍が各地の役所に日人顧問を派遣し、政界を掌握した。初等教育では日教育が行われ、各地に日特務機関がおかれ、植民地といっていい状

    『草はらに葬られた記憶「日本特務」』書評 対日協力者の苦難と民族の分断|好書好日
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    wkatu 2020/01/20
  • 沖縄の若者たちの「地元」、先入観なく見続けた10年の成果 打越正行さん「ヤンキーと地元」|好書好日

    文:太田明日香 写真:坂下丈太郎 打越正行(うちこし・まさゆき)社会学者 1979年生まれ。2016年、首都大学東京人文科学研究科で論文博士号(社会学)取得。特定非営利活動法人「社会理論・動態研究所」研究員、沖縄国際大学南島文化研究所・研究支援助手、琉球大学非常勤講師。2019年3月、『ヤンキーと地元』(筑摩書房)を上梓。共著に『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年)など。 打越さんは大学院生のときに出会った“彼ら”を10年に渡って調査した。出会いは学生時代にまで遡る。広島出身の打越さんは数学の先生になるつもりで琉球大学に進学。学生のときにたまたま大学の駐輪場で、地元の少年たちが酒盛りをしながら同級生に高校を辞めないよう説得している場面に出くわした。それまでは学校が楽しくて、行くのは当たり前だと思っていた打越さんは、そのとき初めて「学校は一部の人のために作られた場所で、自分は無

    沖縄の若者たちの「地元」、先入観なく見続けた10年の成果 打越正行さん「ヤンキーと地元」|好書好日
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    wkatu 2019/08/21
    『仕事がなくなった翌日、打越さんが「昨日雨が降って休みでよかったですね」ともらしたところ「オレは昨日何も食べるものがなかった」と返され、「俺はなんにもわかってなかったな」と自分が恥ずかしくなった』
  • 「国体論はなぜ生まれたか」書評 近代の鬼門、今を議論する礎に|好書好日

    国体論はなぜ生まれたか 明治国家の知の地形図 (MINERVA歴史文化ライブラリー) 著者:米原 謙 出版社:ミネルヴァ書房 ジャンル:社会・時事・政治・行政 国体論はなぜ生まれたか―明治国家の知の地形図 [著] 米原謙 国体は近代日史研究の鬼門だ。言論や政局を支配する強力な理念だったが、その内実が捉え難かったからだ。 書はそんな「国体」の成立過程を辿(たど)る。その語を初めに用いたのは対外関係の中で「天朝」を意識した近世の儒者や国学者で、会沢正志斎『新論』はキリスト教の政教一致に対して日独特の祭政教一致体制を国体と呼んだ。 しかしペリー来航後、その語は強制された開国の屈辱を補償しようとする様々な心性の受け皿となり、国家の体面、国家の独立、万世一系の皇統の存在など多彩な内容がそこに盛り込まれる。国体概念はやがて明治憲法と教育勅語をセットにして擬似的に政教一致を実現させる「国家神道」

    「国体論はなぜ生まれたか」書評 近代の鬼門、今を議論する礎に|好書好日
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    wkatu 2019/03/30
    「国体論はなぜ生まれたか 明治国家の知の地形図」米原 謙
  • 奥泉光「雪の階」書評 二・二六前夜、重大な事実知る|好書好日

    天之御中主と書いてアメノミナカヌシと読む。『古事記』で一番はじめに出てくる神のことだ。二・二六事件が起こったのと同じ1936年に、元女官長の島津ハルを中心とする女性たちが、昭和天皇の死去と、アメノミナカヌシの「直霊」を受け継ぐ皇族の擁立を唱え、不敬罪で逮捕される事件が起こった。二つの事件に直接の関係はなかったが、奥泉光は双方を結び付け、さらに同時代のナチス・ドイツが進めた民族浄化の思想をも取り込み、壮大な歴史ミステリーに仕上げた。 主人公の伯爵の娘、笹宮惟佐子(いさこ)には兄の惟秀(これひで)がいたが、実は兄は双子でもう一人姉がいた。しかし彼女は、双子を忌む古いしきたりに従い、栃木県鹿沼の紅玉院(こうぎょくいん)で清漣尼(せいれんに)という僧になった。周囲の協力もあり、惟佐子の親友、宇田川寿子が陸軍士官とともに山梨県の青木ケ原で死体となって発見された事件に紅玉院が関係していることをつかんだ

    奥泉光「雪の階」書評 二・二六前夜、重大な事実知る|好書好日
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    wkatu 2018/05/07
    『天皇家に対抗して血の純粋性を主張する家系を白雉家と名付けたところに、隠れたメッセージを読みとらずにはいられない』