中国とロシアが軍事を含むあらゆる領域で連携と協力を強化し、事実上の「中ロ同盟」の存在が現実味を帯びてきた。米ロ対立と米中対立の副産物でもあるが、「中ロ同盟」の仮想敵は米国及び、米国と同盟関係を結ぶ日本、北大西洋条約機構(NATO)。東アジアでは今後、米日vs中ロによる「中距離ミサイル」配備競争が加速する。中ロ軍事連携には北朝鮮も接近しており、足踏み状態の米朝関係を揺るがすだろう。 「同盟国」と呼んだプーチン 中ロの軍事的接近は今に始まったわけではない。しかし2019年7月23日、竹島(韓国名 独島)上空で起きた中国とロシア軍機による編隊飛行は、「中ロ同盟」のリアリティを高めた。中ロ軍用機が同時に、韓国の防空識別圏に入ったのは初めてだった。 ロシア国防省は「韓国領空を侵犯していない」と反論し、日本海と東シナ海上空で、ロシアのTU95爆撃機2機と中国H6爆撃機2機が、初の「合同パトロール」を行
トランプ米政権が、中国政府の中国語教育普及を目指した「孔子学院」を「スパイ活動の拠点」とみなし排除している。この一年半の間に、米政府の資金提供を受けられなくなった全米15大学が、孔子学院を閉鎖した。標的は、大学研究者や高レベル技術者を高給でリクルートする中国政府の「千人計画」や、中国留学生にも向けられている。まるで、米ソ冷戦時代の「共産主義者狩り」のマッカーシズム再来を思わせる。病的にもみえる「チャイナ狩り」は、「敵」なくして生きられない米国の国家・社会のメンタリティを浮き彫りにする。 FBIの捜査対象に 孔子学院(写真 米インディアナ州のヴァルパライソ大学の孔子学院 百度百科)は、海外での中国語・文化教育を目的に、中国政府の肝いりでスタート。中国の有力な「ソフトパワー」とされてきた。海外では2004年の韓国を皮切りに、2018年末までに世界154国家・地域に548ヶ所に設けられている。日
台湾の蔡英文総統(写真 花蓮地震の被災地を訪れた蔡総統 総統府HP)の支持率下落に歯止めがかからない。昨年末の世論調査では、彼女の好感度は46.9%と、習近平・中国国家主席の51.1%を下回ってしまった。悪い冗談ではない。中華世界で初めて民主化を達成し、日本をはじめ海外では好感度抜群なのに、なぜ支持率は上がらないのか。内政と対中政策に関する世論調査から低迷の背景を探った。 支持率27%も まず1月末から相次いで発表された世論調査結果をみよう。「台湾民意基金会」が28日に発表した調査で、蔡政権の施政に「賛成」は31・7%で「不賛成」の47%を大きく下回った。政権が誕生した直後の16年5月には7割近くあった支持率はその後、4割台で推移。基金会の調査の最低は昨年8月の29.8%だったが、今回はそれに近い結果になった。台南市長を務め独立派から人気の賴清德・立法院長への満足度は47%(不満36%)だ
排外主義的ナショナリズムが世界で広がっている。イスラム教やヒスパニックを敵視しアメリカ優先を掲げる米トランプ政権、移民排斥を主張する極右が台頭する欧州。米国が推し進めてきた新自由主義グローバリズムが、経済格差と社会の分断をもたらし、人々を窒息させているのが背景である。排外主義的ナショナリズムは決して「対岸の火事」ではない。排外主義と隣り合わせの「日本ボメ」がそれだ。その心理的経緯をたどれば、中国・北朝鮮を敵視する「脅威論」が、排外主義を生み「日本ボメ」へと“昇華”する構図が浮かび上がる。「脅威」はどのように作り出され、それが「日本ボメ」につながったのかを改めて論じる。 既成秩序への挑戦 両岸論71号では、中国が尖閣諸島(中国名 釣魚島)を力で奪おうとしていると政府が煽り、それをメディアがオウム返しに報道することで、中国への脅威論が広がり対中観悪化につながったことを取り上げた。「中国の脅威」
日本人の中国への印象は「良くない」(「どちらかと言えば」を含む)がことしも9割を超えた。「言論NPO」が毎年実施している日中共同世論調査結果(図表は「言論NPO」のHPから)について、週刊誌「AERA」(10月3日号)にコメントを寄せたところ、「2ちゃんねる」のネトウヨ(「ネット右翼」の略称)君にイジられ炎上した。「気印間違いなし」「中共の犬」「もう日本を出て、中国にでも行けば? 」注ⅰなどの罵詈雑言が飛び交った。特に気に入られたのは「中国の脅威をあおる安倍政権が、安保法制の実行を急ぐため公船侵入を政治利用した」というコメント。筆者が言いたかったのは正にこの点だったから「我が意」を得たと言うべきだろう。炎上は勲章だ。ここでは①「中国脅威論」は広く浸透しメディアはそれを助長し体制翼賛化②日本と世界を覆う「ナショナリズム」は新自由主義の反作用③「日本ホメ」という内向きナショナリズムが安倍政治を
中国で全国人民代表大会(全人代=国会 写真 習近平と李克強)が開かれ、李克強首相は、今年のGDP(国内総生産)成長率を7%前後に設定し、高度成長路線から安定成長へと転換する「新常態」(ニューノーマル)路線を打ち出した。一方、習近平総書記は、薄熙来をはじめ徐才厚、周永康、令計画の「新四人組」に対する摘発を断行し、驚くほどの速さで権力基盤を強化している。習発言をまとめた著作が相次いで発行されるなど、江沢民、胡錦濤の二代にわたる集団指導制から脱し、毛沢東、鄧小平に次ぐ「強人政治」を目指し始めたとの観測も出ている。中国政治の新たな展開をどう読み、将来をどのように展望するか。重要なことは目先の変化に目を奪われるのではなく、中国を読み込むきちんとした座標軸を持つこ とだ。一時メディアを支配した「太子党」VS「共青団」という「なんとかの一つ覚え」のような対立軸は、すっかり影をひそめたのは歓迎すべきことだ
台湾立法院(国会)を占拠していた大学生たちは4月11日、23日間にわたる占拠を自主的に解き、実力排除に伴う最悪のシナリオは回避された。彼らの主張は明快である。馬英九政権が中国と署名した両岸のサービス貿易協定を、国民党が強行採決したことへの怒りであり協定の再審議要求だった。学生は、両岸交渉を監督する条例制定を先行する王金平・立法院長(国会議長)の妥協案を受け入れたが、提起したものはそれにとどまらない。第一に、今回の運動を国民党(藍)と民主進歩党(緑)の二大政党の対立軸から分析するのは正しくない。逆に間接民主制では彼らの主張と利益は代表できないと考えたからこそ、「公民運動」という直接民主に訴えたのである。代議政治の行き詰まりは、工業化と民主制を達成した多くのポストモダン国家が直面している共通課題であり、日本も他人事ではない。第二に、学生たちの主張を「統一か独立か」の「統独問題」から論じるのも正
師弟対談の再開にあたって 高井 翻訳と出版(孫旭培著『中国における報道の自由――その展開と命運』と高井・西茹共著『新聞ジャーナリズム論――リップマンの視点から中国報道を読む』。いずれも桜美林大学北東アジア総合研究所刊)のため、師弟対談をしばらくお休みしていましたが、この間、相変わらずどころか、とうとうこれほどまでひどい中国報道が登場したかとため息がつくような記事が目に付き、慌てて西茹さんと21世紀中国総研の中村公省事務局長に再開を呼びかけました。 その典型は、読売新聞が11月13日朝刊国際面から連載した「習近平研究」です。見出しは「対日強硬姿勢崩さず」「尖閣『核心的利益に決まっている』」などと、激しい調子になっている。一番の問題は、情報源も全く示さず、習近平氏の発言をまるで現場で聞いたかのような直接話法で書いてある点です。 習近平の強硬イメージを作るための世論操作? 西 先生から連絡をもら
2012年9月以来の尖閣衝突をめぐる日中対立は、依然緩和の兆候さえ見られないなかで、2013年が暮れる可能性が強い。衝突がここまで拡大し、対峙したままであることについては、むろん双方にそれぞれの責任がある。 9月7日、ブエノスアイレスにおける総会で開催地は「東京」に決定し、日本ではこれを歓迎する一大キャンペーンが行われた。安倍内閣はこの決定を最大限に利用したといってよい。そのウラでまったく報道されなかったニュースがある。 経緯を見ると、1次投票でマドリードが落ちた。となると、2次投票は東京とイスタンブールの争いになる。ここで東京はイスタンブールを下して、1位を獲得したことを知らない者はない。そしてこの2次投票において、プーチンの4票(およびその関連票)が大きかったと、NHKは少なくとも2~3度、およそ「1カ月後に」解説した。10月初めに発売された『文藝春秋』11月号に体育界のボス森喜朗の「
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