前回ミシェル・ヴィヴィオルカの議論を用いて、レイシズムが差別・暴力といった実際の行為として現われるか、それとも偏見に留まっているかは、社会的条件しだいだ、ということを指摘した。 なぜこれが重要なのか。 それは差別現象が「差別アクセル」と「反差別ブレーキ」の対抗関係のなかで起きるからである。 この連載で考えたい問題意識をあらためて明確にしておきたい。 どんな社会的条件が「差別アクセル」になるのか(つまりレイシズムを激化させ差別・暴力という行為を生み出す効果をもつ条件)。また逆にどんな社会的条件が「反差別ブレーキ」となるのか(レイシズム激化を抑制し、差別・暴力行為への発展に歯止めをかけて、せいぜい偏見やマイクロアグレッションに留める効果をもつ条件)。 つまりレイシズムのピラミッドでいえば、下の階から上の階へとレイシズムを激化させる「差別アクセル」(赤の矢印)と、逆にレイシズムを上から下の階へと