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2015年6月21日のブックマーク (7件)

  • 移ろうデータと変えるべき評価 - 経済を良くするって、どうすれば

    マクロ経済を研究している者なら、基礎にしていたGDPが改定されてしまい、手直しを余儀なくされた経験を一度や二度はしているのではないだろうか。大抵は数字の書き換えで済むが、稀に主張にまで響くこともある。それだけに、一種類の統計データや単一の理論に頼らず、多角的に事象を見渡し、総合的に判断することが大切だと思う。 小巻泰之先生の新著『経済データと政策決定』は、そんな移ろう統計データの実態と政策への影響に迫るものである。中でも、消費増税という重大な政策決定の評価がGDPの改定によって変わり得るものになっていたとする第4章の指摘には、考えさせられるものがある。消費増税の評価は、歴史的関心にとどまらず、来年予定される増税判断にも大きく関わってくる問題だ。 ……… 民主党政権下における「消費増税は97~98年の景気後退の主因ではない」(社会保障改革に関する集中検討会議 2011/5/30)という誤った

    移ろうデータと変えるべき評価 - 経済を良くするって、どうすれば
  • マーク・ソーマ 「失業に伴う経済的・社会的コスト」(2006年1月12日)/「失業は主観的な幸福度にどのような影響を及ぼすか?」(2013年12月16日)

    マーク・ソーマ 「失業に伴う経済的・社会的コスト」(2006年1月12日)/「失業は主観的な幸福度にどのような影響を及ぼすか?」(2013年12月16日) ●Mark Thoma, “The Economic and Social Costs of Unemployment”(Economist’s View, January 12, 2006) 経済学者が大学での講義の場などで失業のことについて語る際、失業に伴って発生するコストは経済的な損失だけに限られないと指摘することに気が配られるものである。失業というかたちで遊休資源(利用されないでいる生産要素)が発生すればGDPの減少というかたちで経済的な損失が生じることになるが、失業にはそれ以外にも考慮すべき人的・社会的なコストが相伴うのだ。その格好の例が以下の図に示されている。この図はダラス連銀が発行しているEconomic Letter誌の

    マーク・ソーマ 「失業に伴う経済的・社会的コスト」(2006年1月12日)/「失業は主観的な幸福度にどのような影響を及ぼすか?」(2013年12月16日)
  • タイラー・コーエン 「景気後退が誘発する社会変化」(2009年2月1日)

    ●Tyler Cowen, “The social changes brought by recessions”(Marginal Revolution, February 1, 2009) 「景気後退が誘発する社会変化」をテーマにした論説をニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したばかりだ。景気後退は悪い面ばかりというのは言うまでもないし、目下の景気後退にしてもそれは変わらない。しかしながら、正当に評価されていない事実がある。景気後退下では、フィジカル面(肉体面)の健康が悪化する・・・のではなく、改善する傾向にあるらしいのだ(医療機関を利用する回数が減ったり、健康保険の加入率が低下したりしたとしても)。 〔景気後退や不況は、メンタル面(精神面)の健康に好ましくない影響を及ぼすのは言うまでもないが、その一方で、それほど広く知られていない事実がある。アメリカをはじめとした裕福な国では、景気後退の最中

    タイラー・コーエン 「景気後退が誘発する社会変化」(2009年2月1日)
  • マシュー・カーン&マシュー・コッチェン 「景気後退に備わるクラウディング・アウト効果 ~失業率が高まると、環境問題への関心は低下する?~」(2010年8月21日)

    マシュー・カーン&マシュー・コッチェン 「景気後退に備わるクラウディング・アウト効果 ~失業率が高まると、環境問題への関心は低下する?~」(2010年8月21日) ●Matthew E. Kahn and Matthew J. Kotchen, “Trends in environmental concern as revealed by Google searches: The chilling effect of recession”(VOX, August 21, 2010) 環境問題に対する世間の関心は、奢侈財(ぜいたく品)のような性質を持っているのだろうか? Googleで「失業」と「地球温暖化」という2つのキーワードがどれだけ検索されているかを時系列に沿って調べたところ、景気後退は、気候変動問題への関心を低下させる一方で、失業問題への関心を高める効果を備えていることが判明した。

    マシュー・カーン&マシュー・コッチェン 「景気後退に備わるクラウディング・アウト効果 ~失業率が高まると、環境問題への関心は低下する?~」(2010年8月21日)
  • 都留泰作『〈面白さ〉の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか』 - logical cypher scape2

    文化人類学者にしてマンガ家である筆者が、自ら「世界観エンタメ」と名づけた作品を取り上げ、それらの作品の面白さを分析する。筆者の専門である文化人類学の話が織りまぜられて進んでいく。 内容と直接関係ない話だが、この作者のマンガ『ナチュン』は読んでいて、現役の文化人類学者ということも知っていたのだけど、名大理学部出身だとは知らなかった。名大理学部というと、マンガ評論家の伊藤剛もそこの出身で、さらに聞いた話によると、アニメ評論家の藤津亮太もやはり名大理学部だという。その上、年齢も近い。 関係ないついでにもう一つ、泰作って「たいさく」じゃなくて「だいさく」なのも知らなかった。 世界観エンタメとは何か、というと、人間ドラマよりも世界観を重視した作品で、その世界に住みたくなるような感覚をもたらし、何度も繰り返し視聴するリピーターを生み、それによってヒットしているような作品のことである。 かなり多種多様な

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  • オキシタケヒコ『波の手紙が響くとき』 - logical cypher scape2

    4編の連作中短編からなる、SFミステリ風音響SF 武佐音研に持ち込まれる事件を、音響工学を駆使して解決するというのが、それぞれの話のフォーマットになっているが、最終話に至って、それまでの話が伏線として回収されていき、さらに話は音響工学にとどまらず、天文学や分子生物学をも巻き込む形で拡大していく。 とにかく面白い 追記(20150618) 面白さとしては、SFアイデア面と人間ドラマ面と最後の話のプロット面の3つが挙げられるのではないかと思う。 まず第一のSFアイデア 音響現象によって人間の感覚が揺さぶられるものとなっており、それが特に面白さの核となっている。 目が見えないため、エコー・ロケーション能力を訓練で修得し、音で空間が「見える」ということ 超音波のエネルギーによって、ある限られた範囲でのみでしか聞こえない音がが生まれること 音・音楽が人間の行動に影響を与えること(これはちょっと虐殺の

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  • 渡辺公暁『分析美学エスティシャン』 - logical cypher scape2

    高田さんの形而上学刑事シリーズ*1の二次創作 "分析美学エステティシャン"という推理小説を書きました - kugyoを埋葬する http://d.hatena.ne.jp/kugyo/20150523/1432385847 31世紀の未来、様々な科学技術の発展により、形而上学的な問題(人の同一性、時間とは何か、ロボットの責任とは)が今までになく身近になった時代。形而上学を利用した犯罪も発生するようになり、警察にも哲学的論証が求められるようになった。その名も形而上学刑事。 『分析美学エステティシャン』シリーズは、同じ世界観をもとに、美学的問題を扱う。 形而上学刑事シリーズと同じく、物語のキーポイントとして哲学的論証が出てくるのだが、これにアクションシーンなどが絡んできて面白い。 31世紀の未来が舞台で、アシモフのロボット三原則 一作目の「抽象物としての芸術作品」では、『美そのもの』という芸術

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