マクロ経済を研究している者なら、基礎にしていたGDPが改定されてしまい、手直しを余儀なくされた経験を一度や二度はしているのではないだろうか。大抵は数字の書き換えで済むが、稀に主張にまで響くこともある。それだけに、一種類の統計データや単一の理論に頼らず、多角的に事象を見渡し、総合的に判断することが大切だと思う。 小巻泰之先生の新著『経済データと政策決定』は、そんな移ろう統計データの実態と政策への影響に迫るものである。中でも、消費増税という重大な政策決定の評価がGDPの改定によって変わり得るものになっていたとする第4章の指摘には、考えさせられるものがある。消費増税の評価は、歴史的関心にとどまらず、来年予定される増税判断にも大きく関わってくる問題だ。 ……… 民主党政権下における「消費増税は97~98年の景気後退の主因ではない」(社会保障改革に関する集中検討会議 2011/5/30)という誤った