ブックマーク / tomkins.exblog.jp (7)

  • エルフリーデ・イェリネク『光のない。』 | Living Well Is the Best Revenge

    これまでこのブログでは文学や美術、演劇といった表現を問わず、多くの作品についてレヴューを重ねてきたが、正直言って今回ほどレヴューの困難な対象を扱うのは初めてだ。それは対象自体がジャンルを横断し、虚実を横断し、言語を横断するからであろう。果たしてこのような作品にいかなる言葉で、いかなる方法で応接することが可能だろうか。 今回取り上げるのはオーストリアのドイツ語作家エルフリーデ・イェリネクの作品集『光のない』である。収められた四つのテクストはいずれも戯曲であり、特に表題作は2012年の「フェスティバル/トーキョー」で劇団地点によって演じられて大きな話題を呼んだから、決して無名のテクストではない。「光のない。」は昨年も京都で再演されたが、残念なことに私は見逃してしまった。したがって書はまず文学と演劇を横断する。しかし後で論じるとおり、この作品において両者の関係は決して親和的ではない。書には「

    エルフリーデ・イェリネク『光のない。』 | Living Well Is the Best Revenge
    xijiao
    xijiao 2015/01/03
    "フクシマ、レヒニッツ、非常事態が収束していないことを叫ぶ営みこそ文学ではないか"
  • 飯島洋一『「らしい」建築批判』 | Living Well Is the Best Revenge

    『ユリイカ』連載時より話題となっていた飯島洋一の「『らしい』建築批判」が大幅な加筆修正のうえ、刊行された。きわめて刺激的で挑発的な論考であり、美術に関わる者としても看過できない多くの重大な問題を扱っている。私はこれまでも飯島の建築論をずいぶん読んできた。とりわけ同時多発テロと東日大震災を顕在的/潜在的な主題とした『建築と破壊』と『破局論』は印象に残っている。しかし今世紀の二つの「破局」を主題としながらも、飯島の論考はどちらかといえば抽象的、韜晦的であった。これに対して論はきわめて具体的かつ攻撃的であり、私はまず飯島の書きぶりの変化に驚いた。そして飯島が徹底的な批判を加えるのは安藤忠雄と伊東豊雄という日の建築界、いや世界の建築界のトップランナーなのだ。飯島は次のように記す。「それならば、安藤忠雄や伊東豊雄には、1970年代以降の建築家の、いわばその代表者の立場にあると、そのように演繹的

    飯島洋一『「らしい」建築批判』 | Living Well Is the Best Revenge
    xijiao
    xijiao 2014/10/13
  • ローラン・ビネ『HHhH』 | Living Well Is the Best Revenge

    先日から國分功一郎の『ドゥルーズの哲学原理』を読んでいる。最近、若手によって発表されたこのドゥルーズ論についても機会があればこのブログで応接したいが、最初に國分はドゥルーズの哲学について「自由間接話法的ヴィジョン」という興味深いテーマを提起する。周知のごとくドゥルーズはヒュームやベルグソン、あるいはプルーストやカフカといった哲学者や文学者のテクストに寄り添いながら、自身の哲学を開陳したとみなされてきた。しかし國分は異なった見方をする。 もし哲学研究が、対象となる哲学者の思想を書き写すこと、まとめ直すことであるならば、それはその哲学者が述べたことをもう一度述べているにすぎない。そして、先に述べたとおり、対象となる哲学者の思想とは別の思想をその哲学者の名を借りて語っているのであれば、それは哲学研究ではない。ならば哲学研究は何をするべきか? 哲学者に思考を強いた何らかの問い、その哲学者人にすら

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    xijiao
    xijiao 2013/09/25
  • ホルヘ・ルイス・ボルヘス編『バベルの図書館 アメリカ編』 | Living Well Is the Best Revenge

    半年ほど前から国書刊行会よりボルヘスの『バベルの図書館』が重厚な装丁のもとに新編として刊行され始めた。私の記憶によれば同じ内容のアンソロジーは既に同じ版元から出版されていたが、確か作家ごとにまとめられていたため、いちいち買い求めるには煩雑であり、私は長く敬遠していた。今回の新編は作家ごとではなく国ごとの合、つまりアメリカ編、イギリス編、フランス編、ドイツ・イタリア・スペインロシア編、ラテンアメリカ中国・アラビア編の五部によって構成され、イギリス編のみ二巻、ほかは一巻にまとめられている。以前より関心をもちながらも、読むきっかけがなかった作家が多く収録されていることもあり、この機会に最初に刊行されたアメリカ編をやや時間をかけて通読する。 周知のごとく「バベルの図書館」という叢書はアルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスが古今東西の文学の中から選りすぐった短編のアンソロジーである。した

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    xijiao
    xijiao 2013/04/27
  • 安田浩一『ネットと愛国』 | Living Well Is the Best Revenge

    「在特会」という団体がある。正式名称は「在日特権を許さない市民の会」という。名の通り、「在日コリアン」(在特会は韓国系と朝鮮系を区別しないのでひとまずこの言葉を用いる)の特権を剥奪することを求める「右派系市民団体」であり、街頭で派手な挑発活動を繰り広げることで知られている。冒頭で日有数の在日コリアンタウンとして知られる大阪、鶴橋における街宣活動の模様が語られる。日の丸を掲げてトラメガ(拡声器)を携えた一群の男女が街頭で街宣活動を始める。特定の弾劾の対象がある訳ではない。いわばコリアンタウン全体を相手に、聞くに耐えない差別用語や蔑称を用いて在日コリアンの存在を否定するヘイト・スピーチを繰り返す。会費を伴わない「メール会員」が大部分を占めるにせよ、この団体は今や1万人以上の会員を擁し、右翼系の団体の中でも最大級の勢力を誇る。彼らの活動を体当たりで取材し、記録したノンフィクションが書である。

    安田浩一『ネットと愛国』 | Living Well Is the Best Revenge
    xijiao
    xijiao 2012/10/05
    "安田が報告するとおり、ごく普通の人々が街頭で弱者を罵倒することをためらわない異常な心理とは現実の社会を前にした無力感と仮想現実の中での全能感のギャップとして理解することができないだろうか"
  • 「アラブ・エクスプレス」 | Living Well Is the Best Revenge

    森美術館で開催中の「アラブ・エクスプレス」展を訪れる。「The Latest Art from Arab World」というサブタイトルの通り、アラブの最新の美術動向を紹介する展覧会だ。しかし「アラブ」とは何か。担当したキューレーター自身もカタログのテクストで述懐するとおり、私たちは「アラブ」美術に対してほとんど前提となる知識をもたない。カタログによれば展覧会はいわゆる中東と呼ばれる地域のうち、エジプトからレバント(東部地中海)諸国、湾岸諸国を対象とし、民族、宗教が異なるトルコ、イラン、イスラエルなどは原則として除外されるという。このように言われても具体的なエリアをイメージすることは困難であろう。カタログに掲載された地図を参照してようやくおぼろげに私たちはその広がりを理解することができる。 しかしながらこの地域に関して、文学や映画の領域では既に優れた表現が輩出していることを私はこのブログ

    「アラブ・エクスプレス」 | Living Well Is the Best Revenge
    xijiao
    xijiao 2012/07/09
    "この展覧会が具体的にどのように企画され、作家や作品がいかにして選定されたかは必ずしも明確ではないが、私はむしろこの展覧会が日本人という他者にとってあまりにもわかりやすい点が気になるのだ"
  • ジャスパー・ベッカー『餓鬼(ハングリー・ゴースト)』 | Living Well Is the Best Revenge

    1997年に中央公論社から翻訳が刊行されたジャスパー・ベッカーという研究者の『餓鬼(ハングリー・ゴースト) 秘密にされた毛沢東中国の飢饉』がこのほど中公文庫に収録された。以前よりこの問題には関心があったのだが、最初に刊行された際に買い逃し、しばらく入手することが困難であったため、このタイミングで通読した。1958年から62年にかけて、毛沢東の失政がもたらした未曾有の大飢饉の地獄絵を克明に活写したノンフィクションである。 以前、同じ問題を扱ったフランク・ディケーターの『毛沢東の大飢饉』を通読していたので、この惨事の概要は理解していたが、書を読んであらためて考えることも多かった。最初に書の問題点を指摘しておくならば、記述の根拠とされる資料に新聞記事や回想録などの二次的な文献が多く、書誌的事項がしっかり記載されていない。直接のインタビューや取材が引用される場合も日時や場所、取材相手が明記され

    ジャスパー・ベッカー『餓鬼(ハングリー・ゴースト)』 | Living Well Is the Best Revenge
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