作家、批評家、外国文学者で、古典の良き紹介者だった丸谷才一さんの多才な仕事を振り返った『文芸別冊 丸谷才一』(河出書房新社、1200円)=写真=が出版された。 歌人の岡野弘彦さんら、ゆかりの書き手のエッセーや、評論家の山崎正和さんと三浦雅士さんが故人をしのんだ対談などを掲載した。歴史学者の網野善彦さんをはじめ、単行本に収録されていない丸谷さんの対談選は読みごたえがある。作家の山口瞳さんとは「日本語・国語」の題で語り合い、「生きざま」「視座」など「きらいなことば」を歯に衣(きぬ)着せず挙げている。2012年に87歳で丸谷さんが死去し、間もなく1年半。物事をはっきりと言う、そのたたずまいが今は懐かしい。