経営学者として、企業経営者のお話をうかがう機会が多い。その経験から、何かをやめる決断をするのは、何かを始める決断をするのと同じか、それ以上のエネルギーを要するものなのだなと思う。特に多くの従業員をかかえ、それなりの売上をあげているような事業を中止する時には、当然説明を求める声や、反対論などがうずまく。その事業に愛着を持つ先輩たちがいたりすることも多いので大変だ。 1980年代の終わりごろに、ビール業界に大変革をもたらしたアサヒビール樋口廣太郎氏の経営を密着研究させていただいたことがあった。その時のアサヒビールはドライビールで攻勢をかけるにあたって、既存の主力商品だったラガービールの販売を完全に停止し、在庫もすべて廃棄してしまうという荒業をやった。それで、時代が変わったというメッセージを明確にして、広告宣伝などの迫力が高まる効果が生まれた。ふりかえって、ドライビールを始めたことよりも、ラガー
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