愛用の青いスマートフォンには、心身に障害がある若者から頻繁にメールや電話が入る。何気ない日常会話だったり、生活の相談だったりする。特に多いのが性の悩みという。 日暮(ひぐらし)かをるさん(73)は、その一つ一つに応えている。<自分の体を触りたくなるけど、どうしたらいいの>。自慰行為を求める自分に悩んでいる20代の女性には、こんなメールを返信した。<一人の時に体を傷つけないで触るのは悪いことじゃないよ。否定的に考えないで大丈夫> 東京都立の特別支援学校で約40年間、教諭を務め、とりわけ性教育に力を入れてきた。2009年に定年退職後も、新型コロナウイルス禍の前は月に1、2回ほど、首都圏の障害者向け作業所や支援施設に講師として招かれ、若者たちに性教育の授業をしてきた。 「大半の子が学校できちんと性教育を受けていないから、みんな興味津々で聴いています」。赤ちゃんがお年寄りになるまでを描いた絵巻物を