ブックマーク / webheibon.jp (4)

  • マンガチックの秘密 - 正木香子【タイポグラフィ・ブギー・バック】

    ここにきて、奇妙な逆転現象が生じている。 現在、写植の書体をいちばん身近に感じているのは、ひょっとすると、文字の読み書きを覚えて間もない子どもたちかもしれない。 どうしてかというと、他のジャンルに比べてロングセラーが多い子どものには、いまでも写植の文字がのこっているから。 その理由を、絵の編集者の方に訊ねてみたことがある。 話によると、同じロングセラーでも、実用書、文庫の場合は、改訂や新装版にあわせてDTPに変えることが多い。でも、新刊書店で児童書の棚にずっと置かれているような絵は、つくりなおすタイミングがむずかしいという事情らしい。 世代を超えて長年愛されている『ぐりとぐら』も、そうした「タイミング」が訪れていない名作絵の一冊だ。 野ねずみの「ぐり」と「ぐら」は、森のなかで大きなたまごを見つけ、カステラをつくることにする。 ふんわりと焼きあがった黄色いカステラに、子どものころ心奪

    yarumato
    yarumato 2020/10/09
    “小学館や集英社、白泉社のマンガはアンチック体に写研を使用、講談社は少数派としてモリサワを選択。DTPへの移行とともに写研は姿を消す。モリサワ以外のアンチック体や、本文用の明朝体を使うケースも”
  • ハリー・ポッターと物語の文字 - 正木香子【タイポグラフィ・ブギー・バック】

    〈リュウミン〉という書体のストーリーは、この約30年に日づくりが歩んできたDTP化の歴史と重なる。 モリサワから写植文字盤として登場したのが1982年。そして1993年に、パソコン用の「フォント」として発売された。 私にとって最初の記憶は、小学生のころ、夏休みの読書感想文で読んだ新潮文庫の『火垂るの墓』(野坂昭如)だ。 正直にいって、当時はこの文字でかかれたがあまり好きになれなかった。学校の課題図書に選ばれるような文芸作品や、社会派の小説や、ノンフィクションに使われる、まじめな書体のイメージが強かったように思う。 それがいまや日で最も有名な印刷用書体といっても過言ではない。 小説も、ノンフィクションも、専門書も参考書も問題集も〈リュウミン〉。 直木賞受賞作も、塾や学校のパンフレットも、マンションの広告にも〈リュウミン〉。 まるで安全・安心のシンボルのように、いたるところ〈リュウミ

    yarumato
    yarumato 2019/05/12
    “〈リュウミン〉は平成の時代を駆け抜けた書体。1999年刊行『ハリー・ポッター』日本語版は「物語」の本がDTPでつくられる草分け。そのころ実績あるのは〈リュウミン〉だけ。児童文学では写植がまだ現役”
  • 文字が奏でる音楽 - 正木香子【タイポグラフィ・ブギー・バック】

    パーティーは夜更けまでつづくのだろう。 酒とジャンクフード、床に転がったアナログのレコード。 カラフルでにぎやかなわりに、どこか気だるさも感じられる空間で、身体をゆらし、リズムに身をまかせる若者たち。その小さな一室の、天井や壁や、床に響くような存在感で文字がおどっている。 「今夜はブギー・バック」というこの一枚のシングルCDジャケットに、これらの文字が選ばれたのはきっと偶然ではない。 曲のタイトルは〈見出ミンMA31〉。 アーティスト名は〈新ゴ〉。 いまとなっては、わざわざ目をとめる理由のない、ごくありふれた書体だけれど、この8cmCDが世にでたのがDTP黎明期の1994年だということを考えると感慨深い。 〈見出ミンMA31〉はフォントメーカーのモリサワを代表する伝統的な写植書体のひとつで、1992年にMacintosh用のデジタルフォントとして発売された。 そして〈新ゴ〉のほうは、199

    yarumato
    yarumato 2019/01/11
    “DTP黎明期の1994年。以前からあった書体と、新しい書体とが、ミックスされ、みんなとイメージを共有してつくりだされる文化に惹かれ、あこがれていた。同じダンスフロアの隅に、自分もいるような気がしていた。”
  • モノローグの文法 - 正木香子【タイポグラフィ・ブギー・バック】

    〈タイポス〉というフォントがある。 「日のタイポグラフィデザインの歴史をたどるうえで避けては通れない」といわれる書体だ。 誕生のきっかけは、1959年、美術大学の学生だった桑山弥三郎が、同級生の伊藤勝一、林隆男、長田克巳らと「グループ・タイポ」を結成し、卒業制作のために始めた新書体の研究だった。 それまで職人の専門領域であった「活字書体設計」に、いわば「素人」のデザイナーがはじめて参入したのだ。 ハネなどのアクセントを極力省いた直線と、垂直、水平に近づけた曲線。まるで文字をプログラミングするかのように、モジュール化された幾何学的なエレメント(要素)の組み合わせから成る〈タイポス〉は、従来のゴシック体や明朝体とはまったく異なるデザイン性を備えていた。 その登場は鮮烈で、1969年に写植書体として商品化されるや雑誌「an・an」や「non-no」の創刊号で全面的につかわれ、70年代の新書体開

    yarumato
    yarumato 2019/01/11
    “〈タイポス〉書体は80年代、少年マンガと少女マンガとで大きな違いがあった。90年以降、アニメーションとの融合によって、〈タイポス〉の声が変質した”
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