ブックマーク / www.jst.go.jp (29)

  • 共同発表:88年の常識を覆す画期的な電子顕微鏡を開発~磁石や鉄鋼などの磁性材料の原子が直接見える~

    ポイント 電子顕微鏡は原理的に強い磁場の中に試料を入れるため、磁石や鉄鋼などはその磁場により構造が壊れてしまうなど、原子構造の観察は困難だった。 顕微鏡の心臓部に当たるレンズを新たに考案(特許出願済)し、試料にかかる磁場だけをほぼゼロにして電磁鋼板の原子構造の直接観察に成功した。 電気自動車で使われる永久磁石や電磁鋼板、高密度な磁気記録媒体など優れた磁性材料の研究開発に必要不可欠な先端計測機器となることが期待される。 JST 先端計測分析技術・機器開発プログラムにおいて、東京大学 大学院工学系研究科 附属総合研究機構 柴田 直哉 機構長と日電子株式会社の共同開発チームは、新構造のレンズを組み込んだ画期的な電子顕微鏡注1)を開発しました(図1)。これまで磁場注2)のない条件では不可能だった原子の直接観察を世界で初めて実現し、さらに磁気特性を持つ機能性材料(磁性材料)の詳細な原子の観察に成功

  • 機構報 第1361号:薄膜トランジスタを部分的なレーザー処理で高速化する技術を開発 ~4K8K大型テレビの製造コストを大幅に低減~(産学共同実用化開発事業(NexTEP)の成果)

    薄膜トランジスタを部分的なレーザー処理で高速化する技術を開発 ~4K8K大型テレビの製造コストを大幅に低減~ (産学共同実用化開発事業(NexTEP)の成果) ポイント 4K8K放送では画素数が増加し、画素あたりの表示時間が短くなるため、従来の大型テレビ向け液晶フラットパネルディスプレイ(FPD)では鮮明な表示ができなかった。 開発では、FPDの画素点灯を制御する薄膜トランジスタ素子(TFT)のチャネル領域のみをレーザーアニール処理することでTFT素子を高速化した。 技術は、大型テレビ向けFPDの高精細化や狭額縁化、製造コスト低減に寄与できるため、今後の量産に欠かせない製造技術になると期待される。 JST(理事長 濵口 道成)は、産学共同実用化開発事業(NexTEP)の開発課題「大型フラットパネルディスプレイ向けレーザーアニール技術」の開発結果を成功と認定しました。 この開発課題は、山

    機構報 第1361号:薄膜トランジスタを部分的なレーザー処理で高速化する技術を開発 ~4K8K大型テレビの製造コストを大幅に低減~(産学共同実用化開発事業(NexTEP)の成果)
  • 共同発表:世界最小クラスの発電・センシング一体型血糖センサーを新開発~持続型血糖モニタリング用コンタクトレンズへ応用~

    ポイント 世界最小クラス、超低消費電力の無線送信器回路と、涙に含まれる糖で発電する固体素子型グルコース発電素子で構成される自立動作可能な血糖センサーを新開発。 コンタクトレンズ方式の持続型血糖モニタリング装置の試作に成功。 低侵襲かつ単独自立動作が可能な血糖コンタクトレンズの開発により、糖尿病医療や糖尿病予防に貢献。 名古屋大学 大学院工学研究科の新津 葵一 准教授らの研究グループは、世界最小クラスの発電・センシング一体型血糖センサー(発電とセンシングを同時に行うセンサー技術)を新たに開発しました。これにより、外部からの無線給電などが不要なコンタクトレンズ方式による持続型血糖モニタリング注1)が実現可能となりました。 昨今、糖尿病治療や予防においては、患者自身が血糖値を持続的に把握しコントロールすることが重要となっています。血糖値の測定には、従来、皮下にセンサーを埋め込むなど侵襲性(体内に

    共同発表:世界最小クラスの発電・センシング一体型血糖センサーを新開発~持続型血糖モニタリング用コンタクトレンズへ応用~
  • 共同発表:冷却シートを額に貼る感覚で睡眠の質が計測可能に

    ポイント 冷却シートを額に貼るような感覚で装着できるパッチ式脳波センサを開発。リアルタイムに脳状態を可視化し、手軽に睡眠中の脳波を計測する事に成功。 これまでの睡眠脳波計は専門技師による有線電極の装着が必要なため、家庭で装着するのは困難で、さらに電線があるため寝返りなどの行動が制限された。 今後、睡眠の質と生活習慣病との関係性を明らかにし、手軽な脳波計測による新たな価値創造を期待。 大阪大学 産業科学研究所 関谷研究室を中心とした医脳理工連携プロジェクトチームは、冷却シートを額に貼るような感覚で、容易に装着することができ、リアルタイムに脳状態を可視化できる、パッチ式脳波センサを開発しました。 この度、谷池 雅子 教授(大阪大学 大学院連合小児発達学研究科)、加藤 隆史 講師(大阪大学 大学院歯学研究科)との共同研究により、この手のひらサイズのパッチ式脳波センサを額に貼り付けて睡眠を取るだけ

  • 低コストで軽量な視覚障害者用の「スマート電子白杖」の製品化に成功

    平成23年5月30日 秋田精工株式会社 Tel:0184-33-2143(営業部) 秋田県立大学 Tel:0184-27-2947(地域連携・研究推進センター) 科学技術振興機構(JST) Tel:03-5214-8404(広報ポータル部) 秋田精工株式会社(社長:須田 精一)と秋田県立大学(理事長:小間 篤)は、共同で開発を進めていた視覚障害者用「スマート電子白杖」(商標登録出願中)の製品化に成功し、平成23年5月31日(火)より受注を開始します。 「スマート電子白杖」は、視覚障害者が使用している来の白杖機能に加えて、杖の上部に取り付けられた超音波センサーで正面と頭部前方の障害物を感知し、グリップとリストバンドの振動により障害物の情報を使用者に伝えます。秋田県立大学の岡安 光博 准教授が3年前から開発を始め、2年前には機械の設計・製作を担当する秋田精工株式会社が開発に加わり、さらに、県

  • 笹井 芳樹 氏(1): インタビュー『この人に聞く』 | iPS Trend

    2010年代に入り、網膜や脳下垂体など、神経や脳に関連する組織の立体形成が次々と実現している。成果を上げているのは、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)器官発生研究グループディレクターの笹井芳樹さんだ。笹井さんは、複雑で精緻な脳の構造を「自己組織化」というアプローチで解明してきた。実現間近になってきた網膜再生の臨床応用にも笹井さんたちの研究が生きる。個体形成の原理を追究する発生学は次の時代に向かって走り始めている。 聞き手: 脳という器官や、それをつくる神経という組織に視点を当てて、発生のしかたなどを基礎科学的なアプローチで研究してきました。脳というものをどのように見てきましたか。 笹井: 脳とは不思議な器官だと思い続けてきました。複雑で精緻で、わからないことだらけです。 かねてから遺伝子解析などの先端研究で脳のしくみの解明が進んできました。私自身も、京都大学の中西重忠

    笹井 芳樹 氏(1): インタビュー『この人に聞く』 | iPS Trend
  • 共同発表:生きた状態での生物の高解像度電子顕微鏡観察に成功—高真空中でも気体と液体の放出を防ぐ「ナノスーツ」を発明—

    ポイント 生物は多様な環境に対応するために細胞外物質(機能性膜)で覆われている。 細胞外物質やそれを模倣した薄い液膜に電子線などを照射することで、高真空中でも蒸発を防ぐ、より強力な「ナノ重合膜(ナノスーツ)」を発明。 生きた状態のままで、電子顕微鏡による微細構造観察が実現可能になった。 JST 課題達成型基礎研究の一環として、浜松医科大学の針山 孝彦 教授は、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構の下村 政嗣 教授らと共同で、高真空下でも生命を保護できる生体適合性プラズマ重合注1)膜を発明し、生きたままの状態で生物の高解像度な電子顕微鏡観察に成功しました。 生物の体表は、多様な環境に対応するために細胞外物質(ECS)注2)で覆われています。しかし、電子顕微鏡観察で行われる高真空下のような極限状態では、細胞外物質は内部の物質の放出を抑制することができず、体積が収縮し表面微細構造は大きく変形し

  • 共同発表:イオン性分子を塗布してグラフェンを半導体化できることを理論的に提示

    平成24年11月30日 科学技術振興機構(JST) Tel:03-5214-8404(広報課) 産業技術総合研究所 Tel:029-862-6216(報道室) 筑波大学 Tel:029-853-2040(広報室) JST 課題達成型基礎研究の一環として、産業技術総合研究所 ナノシステム研究部門 大谷 実 研究グループ付と筑波大学 岡田 晋 准教授らは、イオン性分子注1)を2層のグラフェン注2)表面に吸着させることによりグラフェンを半導体化できることを理論的に提示しました。また、吸着させるイオン性分子の種類を制御することにより、半導体化された2層グラフェンの伝導特性を制御できる可能性があることを理論的に示しました。 グラフェンは炭素原子が蜂の巣状に6角形のネットワークを形成したシートで、原子1層からなる究極の薄さと、そのシート上に高移動度の電子が存在することから、世界的に注目されている新材料

  • 共同発表:トランジスターの理論限界を突破 次世代省エネデバイス実現へ

    平成24年6月13日 科学技術振興機構(JST) Tel:03-5214-8404(広報課) 北海道大学 Tel:011-706-2610(広報課) ポイント スイッチング特性の良さを示すサブスレッショルド係数で世界最小の21mV/桁を達成 現在の半導体集積回路に比べ回路全体で消費電力を10分の1以下に低減が可能 デジタル家電の待機電力を大幅カット、モバイル機器電池の消耗を半分に低減する夢の省エネデバイスへ道 JST 課題達成型基礎研究の一環として、JST さきがけ専任研究者の冨岡 克広、北海道大学 大学院情報科学研究科の福井 孝志 教授らは、半導体中のトンネル効果注1)を用いることで、従来のトランジスター(電子の流れを電圧で制御してオンオフするスイッチ素子)の理論限界を大きく下回る低消費電力トランジスターの開発に成功しました。この素子はあらゆる電子機器の省エネルギー技術へ応用できます。

  • 絶縁体に電気信号を流すことに成功-省エネデバイスに新展開-

    平成22年3月11日 科学技術振興機構(JST) Tel:03-5214-8404(広報ポータル部) 東北大学金属材料研究所 Tel:022-215-2181(総務課 庶務係) 慶應義塾大学 Tel:03-5427-1541(広報室) JSTの目的基礎研究事業の一環として、東北大学金属材料研究所の齊藤 英治 教授らは、電子の自転「スピン」注1)を用いることで絶縁体に電気信号を流す方法を発見しました。通常、絶縁体には電気が流れませんが、齊藤教授らの研究では最新の方法で電気信号をスピンに変換して磁性ガーネット結晶注2)と呼ばれる絶縁体へ注入、絶縁体中を「スピンの波」として伝送し、再び電気に変換することによって、絶縁体中も電気信号を伝送できることを発見しました。この電気信号伝送は、省エネルギー技術へ応用できます。 通常の金属や半導体を流れる電流は、ジュール熱注3)と呼ばれるエネルギー損失を伴いま

  • 光を自在に操る3次元フォトニック結晶の作製プロセスの大幅な簡略化に成功―実用化に向けた大きな一歩―

    <研究の背景と経緯> 3次元フォトニック結晶を作製するために、これまでさまざまな方法が検討されてきましたが、如何に、簡潔で、スループットの高い方法で作製するかが重要な課題でした。3次元フォトニック結晶の構造としては、図1に示すような薄いストライプ状の構造を井桁状に組み上げた構造が、最も理想的な構造の1つとして知られています。この構造を如何に、効率良く形成するかが鍵になります。 研究グループは、図1の構造を、赤色の面で切断した面が上になるように、90°回転させて、図2(a)のような構造とすれば、同添付図に示されているように、45°および-45°の斜めエッチングを2回繰り返すことで、3次元結晶が形成できることに気付きました(特願2005-106729号)。わずか2回のエッチングを行なうだけで、3次元のナノ構造が出来るとなると、3次元フォトニック結晶の作製プロセスは大幅に簡略化できると言えます。

  • 3次元フォトニック結晶の「表面」における光制御に成功―優れた信号処理能力を持つ光回路や高感度バイオセンサーなどの実現に道―

    <研究の背景と経緯> 光を微小な領域に蓄えたり必要なところへ伝搬させる、または光を効率よく外部へ放出したり必要な場所に効率良く導くといった“光を自在に制御する技術”は、次世代の超効率光デバイスの実現など、光科学の進展にとって極めて重要な技術です。この技術により、例えば現在、世界的にも重要となっている光エネルギー・電気エネルギー変換デバイス(太陽電池、LEDなど)の飛躍的な発展が期待されます。また、環境中に含まれる極微量の有害物質の検出や、血液中に含まれる物質の検出など、環境・医療面を中心に高感度のバイオ・環境センサーなどへの展開も期待されます。 このような光の制御に最適な構造体として、3次元フォトニック結晶があります。この結晶は、光の波長程度の周期で誘電体が3次元的に並べた人工的な立体構造です。適切な周期構造を構築すると、その周期に対応する波長を持つ光が結晶内に進入するのを、どの方向からも

  • 電場による磁化の制御に成功(低消費電力メモリーデバイスへ新たな道)

    <研究の背景> 強磁性体(磁石)と強誘電体は、それぞれハードディスクやメモリーデバイスなどのエレクトロニクス材料として広く応用されています。近年、この強磁性体と強誘電体との性質を併せ持つマルチフェロイックスと呼ばれる物質群が注目されています。これらの物質の中には、強磁性体と強誘電体の性質がお互い強く結びついているものがあり、これらの物質を用いれば電場によって磁化の方向を、磁場によって電気分極の方向を制御できる可能性を秘めています。また、電流による磁化方向を制御することも試みられていますが、これには大きな電流が必要で発熱量が大きく、高い電力消費を伴います。これに対し、電場による制御では電流を流す必要がなく、消費電力が小さいと期待されることから、マルチフェロイック物質を用いて電場により磁化を制御することができれば低消費電力のメモリーデバイスなどへの応用が期待されます。 しかし、マルチフェロイッ

  • 光の三原色(青・緑・赤)で発光するシリコンナノ結晶-世界初の手法で生成、紫外線でも発光-

    広島大学自然科学研究支援開発センターの齋藤健一准教授らは、レーザーと特殊な流体を組み合わせた独自の手法により、フルカラーならびに紫外線で発光するシリコンナノ結晶の生成に成功しました。 これまで、個々の色で可視発光する多孔質シリコン等の報告はありましたが、一つの生成法で、光の三原色の全てが揃い、しかも、紫外線まで発光するシリコンナノ結晶の生成は、世界初のことです。 生成条件により、発光強度が100倍増加し、発光色も制御できます。生成時間は数分間と非常に短く、フルカラーの発光が可能です。しかも、その物質が、電子デバイスの基幹材料で、かつ原料が無尽蔵で、環境にも優しいシリコンであることも大きな特徴です。今後、照明、ディスプレー、光電子デバイス、体に優しいバイオ-マーカーなどへの応用が期待できます。 なお、この研究は広島大学と科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業さきがけ(「構造制御と機能」領域

  • 世界最大規模の光量子回路を実現(量子コンピューターの実現に一歩)

    JSTはこの領域で、情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築を目指しています。上記研究課題では、光子を用いた量子情報処理を基ゲートから機能的タスクまで実現することを目標とし、実験および理論の両面から追求しています。 また研究の一部については、総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度、文部科学省 科学研究費補助金および科学技術振興調整費の支援を受けています。 <研究の背景と経緯> 量子もつれ合いは、2つ以上の粒子に存在する量子力学的な相関です。量子もつれ合いは、物理的に盗聴を完全に排除できる「量子暗号」や、これまでのコンピューターでは時間がかかり過ぎて計算不可能だった問題を解くことができる量子コンピューターにおいてもカギを握る(光子などの粒子の)量子状態です。量子暗号については、その伝達距離は現在100km程度が限界と考えられていますが、量子もつれ合いを利用する

  • 「黒鉛超伝導体」40年来の難問解決 -鉛筆の芯が超伝導になる-

    東北大学 大学院理学研究科の佐藤 宇史 助教と同大学 原子分子材料科学高等研究機構の高橋 隆 教授らの研究グループは、40年来未解決であった「黒鉛超伝導体」のメカニズムを解明することに成功しました。 研究成果は、平成20年11月9日(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Physics(ネイチャーフィジックス)」のオンライン速報版で公開されます。 成果は、文部科学省・日学術振興会科学研究費およびJST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」研究領域(研究総括:田中 通義 東北大学 名誉教授)の研究課題「バルク敏感スピン分解超高分解能光電子分光装置の開発」(研究代表者:高橋 隆)によって得られました。 <背景> 鉛筆の芯に使われている黒鉛(グラファイト)は、炭素原子が蜂の巣状のネットワークを形成した層状の結晶構造(

  • 透明な絶縁体を電界効果で超伝導に(新しい超伝導材料開発へ道)

    JSTはこの領域で、異種材料・異種物質状態間の接合界面を扱う研究分野の融合によってナノ界面機能に関する横断的な知識を獲得するとともに、これを基盤として界面ナノ構造を自在に制御し、飛躍的な高機能化を可能にする革新的なナノ界面技術を創出すること、およびその有用性をデバイス動作により実証することを目的としています。上記研究課題では、酸化物と有機物で構成される異種接合界面に着目し、これらの界面における電子・磁気・光機能をひな形デバイスとして実証することを目指しています。 <研究の背景と経緯> 最近、鉄とヒ素を組み合わせた材料で高い温度で超伝導注1)を示すことが次々に報告され、注目されています。この鉄ヒ素系超伝導体や銅酸化物系超伝導体などの高い温度で超伝導を示す材料は、絶縁性の母物質に不純物を混ぜ合わせることで多量の伝導キャリアを導入したものです。しかし、不純物によって多量の伝導キャリアを導入できる

  • 室温で働く強磁性・強誘電性物質を開発(極めて多くの情報を記録できる新タイプのメモリーへ前進)

    <研究の背景と経緯> 強誘電性と強磁性を併せ持つマルチフェロイック物質は、全く新しいデバイスが作れるのではないかとの期待から応用面でも注目され、これまでに数多くの研究がなされてきました。 しかし、電気分極と磁化が共存する真のマルチフェロイック物質がなかなか見つかりませんでした。そのうち、反強磁性ではあるものの強誘電性を示すMn系ペロブスカイト酸化物(YMnO3など)でも電気磁気効果の発現を示唆する結果が得られ、研究の重心はそちらに移りつつありました。ただし、一般的にこれらの反強磁性強誘電性物質の示す電気磁気効果は小さく、かつ極めて低い温度でしか発現しません。 一方、ビスマスをAサイト注6)に持つBiペロブスカイト酸化物も反強磁性と強誘電性を示すことは古くから知られていましたが、2003年に米国・メリーランド大学のWangらにより、薄膜の鉄酸ビスマス(BiFeO3)が強磁性と強誘電性を室温に

  • 磁石の磁化方向を電界により直接制御することに成功(低消費電力磁気メモリーへの応用へ新たな道)

    <研究の背景と経緯> 半導体デバイスは、電界を用いて電気伝導率というスカラー量を制御することによって、情報処理(演算)やメモリーの機能を持たせたものです。一方、磁気デバイスは主に情報蓄積に用いられ、磁化ベクトルの向きにより0と1の情報を記録しています。従って、磁化方向制御はそのキーテクノロジーです。磁気デバイスにおいては、外部磁界印加による磁化方向制御が最もポピュラーな手法です。また、外部磁界を必要としないスピン偏極電流による磁化制御技術も、不揮発性磁気メモリー実現に向けて試験される段階に至っています。さらにその先を行く技術として、半導体デバイスと相性が良く、消費電力が小さいと期待される電界による磁化方向制御技術があり、その技術を利用した素子の実現が待たれています。マルチフェロイクス注3)はこのような要望に応える材料として期待されていますが、今のところ電界による磁化方向の直接制御に関する実

  • 酸化物と有機物の接合界面による紫外光検出器の開発に成功 (高性能紫外線センサーの実用化へ道)

    JSTはこの領域で、異種材料・異種物質状態間の接合界面を扱う研究分野の融合によってナノ界面機能に関する横断的な知識を獲得するとともに、これを基盤として界面ナノ構造を自在に制御し、飛躍的な高機能化を可能にする革新的なナノ界面技術を創出すること、およびその有用性をデバイス動作により実証することを目的としています。上記研究課題では、酸化物と有機物で構成される異種接合界面に着目し、これらの界面における電子・磁気・光機能を雛形デバイスとして実証することを目指しています。 <研究の背景と経緯> 酸化物は一般に化学的に安定で、構成元素の多くは埋蔵量の豊富な鉱石から産出されるため、セラミックス材料として幅広い工業用途に用いられてきました。近年、酸化物薄膜の作製技術の向上に伴って、高品質な単結晶薄膜の作製および精密な不純物ドーピングが可能になり、酸化物は新しい電子材料として注目されています。 可視光に応答せ