ナチスドイツを題材にした、“なさそうでなかった”戦争映画『ジョジョ・ラビット』は、観客に新鮮なインパクトを与える作品だ。本作は、ナチスの青少年組織“ヒトラー・ユーゲント”に所属し、アドルフ・ヒトラーを崇拝する10歳の子どもの目を通して、一種のおとぎ話のような世界を描いている。 1945年のナチスドイツ崩壊から、すでに75年。当時を知る世代が少なくなるなか、この題材を扱う人々も、鑑賞する人々も、その多くが実際の体験から切り離されたかたちで、歴史的な悲劇に向き合っている状況といえる。 では我々は今後、ナチスドイツの行ったような、人類が犯した過去の許されざる行為を、博物館の展示ガラスを通すように、あくまで距離をとった“歴史”の一部としてとらえることしかできなくなっていくのだろうか。本作『ジョジョ・ラビット』は、そんな不安に対し、ひとつの答えを提示する作品となっていた。ここでは、その内容を振り返り