今回のコラムの主旨は『戦艦大和ノ最期』(吉田満著、講談社学芸文庫)をTech-On!読者の皆様に紹介することである。同書を未読の方はぜひ読んで頂きたい。既読の方は改めて同書の内容を思い出し、戦艦大和の栄光と悲惨、そして現在の日本の諸状況に思いを巡らして頂きたい。 著者の吉田満氏は学徒兵として、22歳で大和に乗り沖縄特攻に参加、戦況を仔細に観察した。『戦艦大和ノ最期』ほか関連原稿をまとめた『鎮魂戦艦大和』という単行本の後書きに、同氏は「戦闘開始に先立って、艦内の見張、報告、命令を掌握する哨戒当直にたまたま立直したという偶然が、決定的な役割を果たした。艦内全般の戦況を大局的に捕捉することは、あのような大艦では哨戒直に立たない限り、上級指揮官にも望みえぬ幸運であった」と書いている。生還した吉田氏は終戦直後、ほぼ1日で『戦艦大和ノ最期』の初稿を書き上げた。同書の主題について吉田氏は後年、次のように