「世界ハ是レ即チ一ツノ大戯場」すなわち「世界はひとつの大劇場」。この、シェイクスピアの名言“All the world’s a stage〜”とも似た言葉を、英国から遠く離れた日本で、しかも江戸時代に語った絵師がいました。それが、荒唐無稽(こうとうむけい)な絵を描き続けた脱力絵の奇才・耳鳥斎(にちょうさい)です。 耳鳥斎って誰だ? 耳鳥斎「絵本水や空」安永9(1780)年 木版墨摺 23.5×16.5cm 国立国会図書館 江戸時代後期、鳥羽絵(とばえ)と呼ばれるマンガのような戯画が流行していた大坂で、酒造業を営んでいた耳鳥斎。財産を使い果たして骨董商に転職すると同時に、独学で絵をまなび、オリジナリティあふれる戯画を描き始めました。実は踊りなど旦那芸(だんなげい)の稽古に励んだり芝居の舞台に出たりもした趣味人で、妙にキマジメな面もあったとか。ふりきった滑稽さやおかしみの背景にも、どこか都会的